二人で一人 51話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

「二人で一人」を最初から読む方はこちらから


三人は駐車場に止めてあった女性が乗ってるとは思えないジープに荷物を入れた。


「ねぇちゃん、すぐに家戻らないで、ちょっとファミレス寄ってくんない?」


「いいわよ。どうしたの?」


「俺も久しぶりに帰ったし、麻子には親父の事教えといた方がいい思って。」


「…。そうね。」



車は大きなファミレスに入り、三人はそれぞれサイコロステーキ定食、


シーフードサラダセット、カルボナーラセットを注文した。


早速煙草に火をつけた江崎の姉は、


「ごめんなさね。まだ自己紹介してなかったわね。


隆弘の姉の三原 渉(あゆむ)です。結婚してるから隆弘とは苗字が違うけど。


渉って呼んで。じゃぁないと隆弘と私が一緒に振り返る事になるから。」


「小林 麻子です。隆弘さんにはいつも助けられてます。」


「隆弘が女性実家に来るなんて初めてなんじゃない?」


「いいだろ、そんな事。」


麻子は何も言わずただ微笑んだ。


「で?今はどうなってんだ?親父。」


「もう施設への入院も考えてるの。」


「そんなにひどくなってきてるのか…。」


「どうする?父さんの顔見ていく?」


「答えはねぇちゃんだって知ってるだろ。『Np』だ。」


「やっぱりね。じゃぁ今どこに泊まるのよ。」


「駅に近いサンホテルに泊まるよ。」


「ホテル代がもったいないじゃない。うちに来ればいいのに。」


「今日はねぇちゃんに麻子の事を紹介しに来ただけなんだ。」


渉は大きくため息をすると、


「そう言うとは思ったけど…。」


「あと一つ。これは未定なんだけど、俺達結婚するかもしれない。」


思わず大声で


「本当に?!」


と叫んでしまいそうだったが、その衝動を抑えて江崎の手首を持った。


「本気なの?」


「あぁ。今まで遊んでた女の人にはみんな謝ったよ。


それも麻子が『女性を泣かせるのは卑怯』みたいな事言ってくれて目が覚めたんだ。」


渉は麻子を見ると、


「ありがとう。隆弘の女遊びは私達も手を焼いてたのよ。


大学も専門学校も東京で勝手に決めちゃって。全然家に近づかなかったのよ。」


麻子一人が来ただけでこんなにも歓迎されるとは思っていなかった。


「どうせ他のホテルにいるだろうって充さんと話してたし、


夕食だけでも四人でしない?ねっ、充さんにも携帯入れとくから。」


「義兄さんそんなに忙しいのか?今日土曜日だぞ。」


「まぁ、色々よ。」


どういって誤魔化し、店をどこにするか充と電話で相談している様だった。