二人で一人 50話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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二人が北海道に出発としようとした日は大騒ぎだった。


朝早くから出てきたからどこかで朝食を取らないといけなかったが、


空港内より、浜松駅で食べた方が安く上がってた。


人が北海道に出発とした時、受付カウンターで江崎の袖を引っ張った。


麻子の最近の癖が江崎の手を握るのではなく、服を引っ張って江崎に伝えたい事がある事を


江崎に示していた。


江崎も最初は冗談だと思ってたが、最近に慣れてその合図でなるべく応じる様になってきた。


「ん?」


「あのね…。実は高所恐怖症なの。」


「そうならそうと言ってくれよ。電車で行くことも出来たのに。」


「でも飛行機の方が早いんでしょ?」


先程からつまんでた手を江崎の手に重ねた。


「ずっと手を握っててね。」


その笑顔を見ただけで、納期後の疲れが飛んでいきそうだった。


「大丈夫だよ。千歳から乗り換えて稚内空港に行くだけだ。実際に飛行機に乗ってるのは二時間位だし


でも帰っても何にないところだけどな。」


「平気。隆弘さんのお姉さんにお会いできるんだもの。


本来の目的はそれだったんだから。」


搭乗口から飛行機に場所を移すと、麻子は深く深呼吸をした。


「窓際の席じゃなくて残念だったな。」


「無理よ。窓際の席なんて。ただでさえ緊張してるのに、空が見えるなんて。」


「麻子ってさ、なんでもサバサバしてるけど、こういう女らしいところもあるんだな。」


からかいながら江崎は応じた。


飛行機の旅は何の問題なく稚内空港に着いた。


そこで二人を待っていたのは江崎の姉だった。


飛行機の中では子供が二人いるから、太ったって愚痴を言ってたなど


江崎の姉の事を聞いてたが、


本当に出産を二回もした事があるのだろうか、と思う程スタイルは良く顔だちも江崎に似ていた。


「ようやく来たわね、この親不孝者。」


「ねぇちゃん、最初の言葉がそれってひどくないか?」


「だってあんたが帰ってきたの何年ぶり?」


「いちいち覚えてねぇよ。ねえちゃん、車は?」


「駐車場。」


「分かった。っとそれと彼女、小林 麻子って言うんだ。今付き合ってる人。」


「小林 麻子です。よろしくお願いします。」


そう言って頭を下げた。