中島が帰宅したのは始発が出る時間ごろだった。
(少し寝るか)
簡単に酒の瓶や灰皿を掃除して寝室に行くと麻子は起きてた。
「あれ?麻子、寝なかったのかよ。」
「さっき目をさましたとこ。中島さんの声は大きいから。」
苦笑して答えた。
「隆弘さんは今から寝るんでしょ?」
「あぁ、さっきまで中島と飲んでたからな。」
「じゃぁ私も二度寝しようかな。今日休みだし。」
そう言って後ろに手を回して組んでいた江崎の腕に頬を寄せた。
「わっ、隆弘さんお酒くさ~い。」
「しょうがないだろ。さっきまで飲んでたんだから。」
「お前、どこから俺達の会話聞いてた?」
「…。隆弘さんのご両親のとこぐらいから。」
「…。そうか。気になんねぇの?俺の両親とか姉貴の事とか。」
「隆弘さんが言いたくなったら聞く。」
そう言うと目を閉じてしまった。
江崎も麻子を抱きしめると、すぐに眠りの妖精は江崎を眠りの淵に立たせた。
二人が目を覚ましたのは昼過ぎだった。
「う~、頭痛て。」
「どれだけ飲んだの?」
「焼酎を5本目まで開けて、あと3分の1だけ残ってる。」
「そんなに飲んだの?!」
「自分ん家だから油断して飲み過ぎた。」
「ちょっと待ってて。」
「どこ行くんだよ。」
「いいから。」
そう言うと江崎の質問に答える事なく財布だけを持って麻子はマンションから出て行った。
10分程して、麻子が帰ってきた時には麻子の額には汗が滲んでおり呼吸も荒かった。
手にはコンビニの袋がある。
麻子はまず自分の喉を潤ませる為に作り置きしておいたアイスコーヒーをグラス一杯分飲み干すと
リビングで横になってる江崎にビニール袋の中身を渡した。
それは二日酔いにいいと言われてた栄養ドリンクだった。
「取りあえずこれ飲んで様子をみましょう。」
「お前…。これ買いにわざわざ走ったのか?」
「だって隆弘さんがしんどそうだったから。」
その言葉で今までの二日酔いは、どこかに飛んでいきそうだった。
だが現実として頭が痛いのには変わりない。
ありがたくドリンクをもらうと、大きくため息をした。
「俺も酒が弱くなったなぁ。歳なんだろうな。」
「歳って…。まだギリギリセーフで20代じゃない。」
「来年には30のおっさんだよ。」
『来年』
麻子は自分達はまだ一緒にいるのだろうか。
それとも…。
それだけは考えたくなかった。
この一ヶ月で、付き合ってた女性とは全員と別れたと、告げられたばかりだった。
この些細な幸せは続いて欲しかった。