麻子が作った料理をたいあげると、それだけで満足してしまって
何の為に麻子を呼び戻したのかを忘れる所だった。
食後の一服をしていると、
「それで?話ってなんですか?」
麻子が食器を食器棚に片づけながら聞いてきた。
「あっ…。あぁ。」
自分から言い寄られる事は多くても、自分から自分の気持ちを打ち明けるのは苦手だった。
それは世の男性のほとんどがそうだが、
中島がみてきた通り本命の女性には何を言えばわからなかった。
「あのさ…。今日の事だけど。」
食器を片付け、コーヒーを入れてた麻子の手が止まる。
「『なかった事にしよう』って言ったけど…。」
「…。」
「やっぱり無理だよな。」
ゆっくりとマグカップにコーヒーを入れ、テーブルに置いた麻子は正面に座ると、
「今さら言われても…。あの時私がどれだけショックを受けたか分かってるんですか?
それとも昨日の女性みたいに私は扱われるんですか?」
「いや!それは違う。昨日彼女に言った通り、他の女とはちゃんと別れる。
俺にはお前じゃないとダメなんだ。」
その言葉を聞いて麻子は呆れた顔をした。
「それで…。何人の女性とお付き合いされてるかは知りませんけど、他の女性が
あっさり納得すると思ってるんですか?もし、私が彼女達の立場ならきっと江崎さんを恨むと思います。」
「そうだろうな。」
「分かってて、おっしゃってるんですか?」
「…。あぁ。」
「…。じゃぁ私も一緒にその女性に謝ります。」
そう言われて思わず麻子の顔を見つめてしまった。
「謝るって…。何でお前まで。」
「江崎さんと正式にお付き合いするのなら、恨みは半分以上は私に向けられるのはわかってます。
それは女性だからわかる事です。別れと告げられて最初は江崎さんを恨むと思います。
でも最終的に恨みの矛先は私に向けられるんです。女ってそういう生き物なんです。
だから、私も謝ります。」
麻子はこんなに強い女性だったのだろか…。
仕事で見ていた時は一切感じさせない言葉だった。