私の彼、紹介します 48話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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バタバタと走って店まで着くと開店15分前だった。


当然『朝礼』が始まっていた。


「大久保、どこに行ってたんだ。もう朝礼始まってるぞ。」


あざの残った顔で不機嫌マックス状態の高杉さんが私を睨みつけた。


「支配人の所に行ってました。すみません、遅くなって。」


「支配人?支配人がお前なんかに何の用事があるんだ。」


「それは…。あとからマネージャーに連絡が入ると思います。」


「まぁいい。さっさと朝礼に並べ。」


私は持参してた予約リストで今日いらっしゃるお客様の事やすでに決められてる方のメニューを


皆に報告した。


『朝礼』はほぼ終盤になっており、私からの報告で終わってしまった。


個室から出ていく時、こっそりと相馬さんに私がいない間に報告された事を聞いた。


「ワインリストに載ってるのに、入荷してないワインが1本あったんだ。」


相馬さんはワインリストを広げると1つのワインを示した。


「この、ボルドー。今はないから注意して。まぁ大久保さんは受付だから大丈夫だと思うけど。」


「ありがとうございます。」


「ところで支配人の所に何しに行ったの?」


「さっき、高杉さん殴られたでしょ?あの子が辞めさせられない様に頼んだのと


高杉さんのやり方に皆が不服を持ってる事の報告。」


「それって、確か大木も言いに行ってたなぁ。今日、殴られた事は話してないみたいだけど。」


「これで少しはここの職場環境も良くなるといいんだけど。」


「どうだろうな。相手は高杉さんだぞ。そう簡単に解決しないと思うけど。」


「…。そうね。」


そんな話をしていたら開店5分前だった。


急いで受付カウンターへ向かう。


すでに待っているお客様がいたけど一人だけびっくりする様な人がいた。


彰君だ。


彰君は私の姿を確認すると、


「今日は下見。どれだけひどくなってるかね。」


「一人で来たの?」


「そう。俺、ここの飯って食った事ないんだよね。じゃぁよろしく。受付さん。」


彰君は何食わぬ顔をして待っているお客様の列に並んだ。