レストランを出る時に林田さんにお礼を言ってから私達は店を出た。
ホテルの目の前にはカフェがあった。
二人でそこに入ると、
「よかったな。今日の代金チャラになって。」
「正直助かった。お財布の中が空になるかと思ったもん。」
「林田さん、高杉さんとは大違いだろ?」
「うん。本当にお客様を大事にしてるって感じ。高杉さんは安いコースを選んだ
お客様に対して顔は笑ってるけど軽蔑した様な目をして見てるもんね。」
「だから俺、あの人嫌いなんだ。」
「分かる気がする。でもすごいね。彰君あそこで働くんだ。頑張ってね。」
「今の実力じゃ、あそこじゃまだまだだから下っ端からの始まりだよ。」
「彰君でも?」
「佳那も見てたろ?俺はあのレベルまではいってない。」
「そっかなぁ。」
「さて、帰るか。俺、今日遅番なんだ。」
「間に合う?」
「今からだとギリギリだな。」
「じゃぁ、急いで帰ろ。」
私達は腕を組んで帰った。
彰君は遅番で仕事があるけど、私は休みだからどうしよう。
「ねぇ、彰君が帰ってくるまで彰君ん家で待ってていい?」
「いいよ。でもDVDは漁るなよ。」
「あれ以外でもあるの?」
「内緒。」
「って事はあるんだ~。まっいいけどね。近くのレンタルショップで映画借りて観てる。」
「じゃぁ、俺このまま行くから。」
そう言って私の頭を撫でた。
私は無性に彰君の匂いが嗅ぎたくなってネクタイを緩めた彰君の襟をつかんだ。
「うん、今日もいい匂い。」
満足気に言うと呆れた様に
「だから外でそれは辞めろって。」
「だって、我慢出来なかったんだもん。」
「ったく。」
そう言いながら駅に行き私達は別れた。