Tomorrow is another day 第2章 始めからの方はこちらから
千夏が佐々木総合病院に着いて、ナースセンターで勝が入院している病棟を聞いていたら
後ろから声をかけられた。
「中島 千夏さんですね?」
「そうですけど。」
「ちょっと署でお話をお聞きしたいので、よろしいでしょうか?」
言葉遣いは丁寧だったが、拒否するのさえ許さない様な視線だった。
「その前に息子に会いたいんですけど…。」
「では、私達も同行させて頂きます。」
警察の人間が来た時点でようやく千夏は
(なんて事をしてしまったんだろう…)
と、後悔し始めた。
千夏がガラス越しに見た勝は酸素マスクをされ、2~3本の点滴を受けていた。
「私達でも面会は許可されていません。ここから勝君の様子を見て下さい。」
しばらくガラス窓に手を付けて勝を見ていたが、警察官に促されてパトカーに乗った。
事情聴取はすぐに行われた。
男性の警察官2人と女性の警察官が1人。女性の方は事情聴取をパソコンに打ち込んでいる様だった。
「いつから勝君を一人にしてたんですか?」
「…昨日です。」
「昨日からにしては勝君の病状は悪いです。正直に言って下さい。調べたら判る事なんですから。」
しばらくうつむき黙っていたが警察官にもう一度同じ事を言われて口を開いた。
「すみません。本当は5日か6日位前からです。」
「そこまですると、保護責任者遺棄の罪に問われます。」
「そんな…。ちゃんと食事の用意はして外出してましたし、電話でも話してました。」
「5歳の男の子に冷めた料理をレンジにかける事が出来ると思ってるんですか?」
「申し訳ありません。」
「それと、これは東京からの報告ですが、前のご主人が女性と会っていたのを
その結婚前の女性のご実家に送られたりしてたみたいですね。
最近は離婚されたご主人の家に入ろうと何度も訪ねて来ている様ですが。」
「…。」
「この行動は下手するとストーカーになります。その件のお話もお聞きしたいので
これから、しばらくはここから出られないと思っていて下さい。」
「判りました。」
取締室という密封された部屋で質問をされると、いかに自分がマズイ事をしたかを実感した。