Tomorrow is another day 第2章 始めからの方はこちらから
1ヶ月もすると中島の病状は良くなり、顔色も良くなってきた。
ただ、麻子は五十嵐医師が言っていた、
『また繰り返すかもしれない』という言葉が気になっていた。
3日に1回はカウンセリングをしていたが、何故あの様な無茶な事をしたかは話したがらなかった。
ただ、優人や麻子が見舞いに行く度に
「早く出してくれよ。飯が不味くてしょうがない。」
と、ばかり言っていた。
麻子が一人で見舞いに行った時、思い切って聞いてみた。
「ねぇ、なんであんなに薬を飲んじゃったの?」
「睡眠薬をバーボンで飲んだのまでは覚えてるんだけど、あとの事は覚えてないんだ。」
「睡眠薬をアルコールで飲んだの?」
「家に飲み物がなかったからな。」
「水道水があるでしょ。水道水が。」
「蛇口から出てくる水は不味くて飲めね~よ。」
「今度はペットボトルの水か、清浄機買うのね。睡眠薬をアルコールで飲むなんて論外だわ。」
「お前だって睡眠薬飲んでるじゃね~か。」
「何で知ってるのよ。」
「山下君に聞いた。結婚したら子供が欲しいから、
睡眠薬なしでも眠れる様にしてやりたいって言ってたぞ。」
「子供の話はともかく、私はちゃんと水で睡眠薬は飲んでるわ。もうダメよ。
アルコールで睡眠薬なんて飲んじゃ。」
「判ってるよ。今回の事で身にしみたから。」
中島はふてくされた様に言った。
帰りに五十嵐医師の元へ寄った。
「先生、中島さん。いつ頃退院出来ますか?」
「う~ん。カウンセリングの報告では、また繰り返す恐れがあるとの事ですからねぇ。
でも、いつまでも入院させておく訳にはいきませんから。
会社へ復帰したら精神状態も落ち着くかもしれませんね。
今度、中島さんと話し合ってもうそろそろ退院の日付を決めましょうか。」
「ありがとうございます。」
「だけど、とても仲が良いんですね。皆さん。ほぼ1日ごとにはお見舞にいらっしゃってますから。」
「三人の間で色々あったんです。」
「そうですか。でもいい傾向かもしれませんよ。ここまで心配してくれる友人がいるというのは。」
麻子は中島は『友人』というジャンルに入るのか疑問に思った。