麻子は振り向きもせず、答えてた。
優人のいる位置から麻子はきっと泣いているだろうと思って
後ろから抱きしめた。
「全然、大丈夫に見えないよ。泣いちゃったら、やっぱり辛いんでしょ?」
「違うの。ただ玉ねぎを切ってるから目にしみちゃっただけ。」
「嘘ばっかり。本当に泣いてるじゃない。辛いなら辛いって言っていいんだよ。」
そこで初めて振り向き優人に抱きつきながら、声も出さず肩だけを震わせていた。
しばらく優人が抱きしめてくれて、少し落ち着いた様子になったらしく、
「忘れよう、忘れようっていっつも思ってるの。優人さんもこんなに心配してくれて。
今は優人さんがいるけど、一人で眠るとね涙を零しながら起きるの。
そんな風に朝を迎えるのは疲れた…。」
しばらく黙って抱きしめていた優人は麻子の目を見て、
「一人で眠るのが辛かったら一緒に住む?僕と一緒だと泣かなくなるでしょ?」
「…。だって優人さん、猫アレルギーでしょ?
エリーも一緒にここに来なきゃいけなくなる」
「確かに僕は猫アレルギーだけど、麻子さんが泣く方が僕も辛いよ。
だから、うちにおいで。僕もエリーと仲良くする様にするから。」
「本当にここに来ちゃってもいい?毎晩一人で寝る時、泣くのは疲れたから。
だけど、どうして私にここまで心配してくれるの?いつまでも中島さんの事を
忘れられないのに。」
「僕が麻子さんを守りたいからだよ。一番大切な人だからだよ。」