優人も麻子の様子で中島が以前ウェディングサロンに一緒に来てた
男性だと気が付いた。
「初めまして。僕、山下 優人という者です。以前、僕の勤め先にいらっしゃった
事がありますよね。」
麻子をかばう様に立ち自己紹介をした。
「えっと、そうでしたか?」
「麻子さんと僕の勤め先のブライダルサロンに10年前にいらっしゃいました。」
「あぁ、あの時の。」
結局、麻子と結婚しなかったのを知っているらしき優人に対して
中島の方も気まずくなったのか、口数が減っていった。
「麻子と…。じゃないな。麻子さんとお付き合いされてるんですか?」
「えぇ、ちょっとご縁がありまして。それじゃぁ失礼します。」
麻子が持っていたマイバックの荷物を持つと振り向きもせず帰っていった。
マンションに着いてから麻子は沈んだ様子だった。
「さっきの方、麻子さんが前に付き合ってた人?」
「うん。沿線が違うから会うとは思ってなくて、びっくりしちゃった。
きっと、結婚して引っ越したんだろうね。」
「大丈夫?」
「えっ?何が?」
「だってずっと忘れられなかった人なんでしょ?」
「いいの、今は優人さんがいるから。」