優人と付き合っている事は誰にも話していなかったけれど
若い真里にはすぐに気づかれた。
「あ~さこ先輩。」
「な~に?」
真里の顔を見ずにひたすら記事の文章をパソコンに打ち込んでいた。
「麻子先輩、彼氏出来たでしょ~。」
思わず真里の顔を見てしまった。
「それは真里ちゃんの誤解よ。」
「だって、出勤の時の服が重なる事が、最近増えたもん。
彼氏ん家に泊まってるとしか考えられません。」
「それは~、徹夜が締め切り前で忙しいからなの。」
「そっかなぁ。麻子先輩ん家に電話しても誰も出ないですよ。」
ここまで質問されたら、真里に出版社の人間に広まってしまう。
諦めて、正直に答える事にした。
「真里ちゃん、ここだけの話にしてね。」
「わかってます、わかってます。」
真里は答えが聞けると思ったのか笑顔で小声で答えた。
もちろん麻子も同様に小声になる。
「実はこないだ行ったウェディングドレスの専門店の店長さんとお付き合いしてるの。」
その途端に真里の声が大きくなり、
「うっそ~!!あのイケメン店長さんと?」
「真里ちゃん声が大きい」
編集部の皆の視線が麻子と真里にそそがれる。
麻子はデスクで頭を支えてしまった。