優人と麻子のマンションは近かったのだが、
「あぶないし、タクシーで帰った方がいいよ。」
と、タクシーを呼んでくれた。
「大丈夫よ。近所なんだから。」
「でもこの辺は夜、あぶないから。」
タクシーで帰るべきだと、優人は譲らなかった。
結局、優人の言う通りにタクシーで自宅に帰ったのだが、エリーにご飯をあげてから
優人のマンションに戻りたかった。
何故なら、一人で眠るとどうしても彼の夢を見てしまい、涙をこぼして起きてしまうから。
優人の事は大事にしているつもりだった。あんなに麻子の事を心配もしてくれて、
彼の事を忘れられない事も承知で付き合っていたのだから。
だが、エリーはマンションの廊下を歩く足音で麻子が帰ってきたのを察知して
鍵を開けるまで玄関でみゃ~みゃ~鳴いているから、
しょっちゅう優人のマンションに泊まるのはエリーもかわいそうだと思った。
部屋の掃除をしているとクローゼットには優人のスーツが人揃えかけてあった。
優人もたまに麻子のマンションに泊まるので、朝早く自宅に帰るより
麻子の家で着替えてから出社した方がいいと麻子が提案したのだ。
反対に優人の部屋にも麻子の着替えは置いてあったから、
いちいち、お互いに自宅に帰らなくても泊まった日でも
そのまま出社できていた。