外食に向かったのは、最初に優人と食事をしたイタリアンの店だった。
マスターは麻子の事を覚えていたらしく、優人をからかった。
「山下君、こないだ一緒に来た方だね。どうしたの。二人して。
もしかして付き合い始めたの?」
「僕が強引にアピールして、ようやく交際をさせてもらってます。」
「山下君は、見かけによらず好きになった人にはすっごくアピールするからね。
よかったじゃない。今日はお祝いじゃないけど、グラスワインおごるよ。」
「いいですよ。そんなに気を使って頂いただいてもらわなくても。
これからはちょくちょく、彼女と食事に来ますから。」
「まぁ、まぁ。堅い事は抜きにさ。僕も嬉しいから。」
「ありがとうございます。」
店には客が誰もいなく、二人っきりで食事が出来る事が出来た。
「こないだと違うメニューがいいよね。お互いシェア出来る様に
違う物を頼もうか。」
「そうね。そっちの方が楽しいし。」
優人はリゾット。麻子はパスタを注文した。
食事の途中で以前から優人が気になっていたらしい事を麻子に聞いてきた。
「麻子さん。前にジントニックを注文した時、飲み始めてから浮かない顔してたよね。
あの男性が好きだったカクテルだったの?」
「…。うん。最初がビールで次からはジントニックばっかりの人だった。」
「そっか…。じゃぁ、今度は僕の好きな食べ物や好きな料理とか覚えてくれる?
そうしたら、僕達の時間も親密になると思うんだ。」
「もう、覚えてるよ。お酒は優人さんのイメージと違う日本酒だし
料理は煮物が好きだよね。」
「嬉しいな。もう覚えてくれてるんだ。」
食事の後にマスターがご馳走してくれたワインとチーズで食事を終わらせ
二人で優人のマンションに帰った。