映画を觀始めて麻子は後悔した。
どうしても、彼とこの映画を観た事が昨日の様に思い出される。
黙って映画を観ていると優人が肩を引き寄せてくれた。
優人の肩に頬を寄せてしばらく無言で觀続けた。
映画が終わり、優人が黙ってDVDをブルーレイドライブから出して振り向いた。
「大丈夫だった?」
「…。うん。優人さんには申し訳ないけど、やっぱりこの映画を観に行った事は
思い出しちゃった。でも最後まで観れた。きっと少しづつでも彼の事は
過去の人になると思う。」
「急がなくていいんだよ。ゆっくり僕達の時間を作っていこう。」
「ありがとう。ありがとう。」
何度も繰り返し優人の胸で涙を流してしまった。
しばらく麻子を抱きしめながら、笑顔で麻子を見て
「今日は外食にしよっか。気分転換にもなるし。」
「でも夕飯の支度、半分位しちゃった。」
「じゃぁ、それは明日食べよう。」
その言葉でこんなに麻子に優しい優人を大事にしなくてはいけないと決心した。