「僕もこの曲が好きでよく聴くんですよ。歌詞が好きで。ほら、歌詞の中に
『10000回だめで へとへとになっても 10001回目は 何か変わるかもしれない』とか
『10000回だめで 望みなくなっても 10001回目は来る』ってあるじゃないですか。
つまり、希望は捨てちゃダメだって事なんだなぁって思うんです。」
「希望ですか…。」
「そうです。希望は捨てちゃダメなんですよ。
いつか明るい未来があるんですから。」
今まで彼にこだわり過ぎて『希望』なんて考えてもいなかった。
グラスのチュウハイを一口飲むと優人は笑った。
今まで笑っていた優人が突然くしゃみを突然始めた。
「山下さん、花粉症ですか?」
「いえ。そんなはずないんですけどねぇ。ぐしゅん。」
そこへエリーが隣の部屋から餌を食べにやってきた。
優人がいたので毛を逆撫でて威嚇し始めたけれど、それ以上に優人の方が
エリーから離れようとした。
「ぐしゅん!小林さん、猫を飼ってらっしゃるんですか。僕、猫アレルギーで…。」
「あらあら、大変。エリー、ご飯はあっちで食べておいで。」
エリーは麻子が隣の部屋に連れて行こうとする前に後ずさりして
さっさと逃げてしまった。
「大丈夫ですか?今換気しますね。あと空気洗浄機も出しますから。」
窓を開けようとした麻子を優人が後ろから抱きしめた。