ピクリと抱きついてきた優人に反応しながら、そんなはずはないのに
「山下さん。そんなに猫が怖かったんですか?」
麻子はごまかした。
「違うんです。小林さんの背中がとても寂しそうだったから…。」
「…。」
そっと優人の腕に手を置くと二人は向き合った。
ゆっくりとお互いの顔が近づき唇を交わした。
翌朝、二人は一緒にベッドの中にいた。
いつもだったら涙を流しながら目覚めるのに、
優人の体温で涙は零れてこなかった。優人は麻子の隣で熟睡している。
麻子はいつも通り5時前に目が覚めてしまった。でも、彼の夢を見ず
涙を流しながら目覚めなかっただけでも安心した。
優人を起こさない様にベットから降りるとコーヒーを入れた。
しかし、優人はキッチンでコーヒーを作っている音で目が覚めたらしい。
「小林さん。朝、早いですね。」
「おはようございます。コーヒー入れてますけど飲みますか?」
「ありがとうございます。」
久しぶりに再会してから1週間もしないで、この様な関係になったので
まだまだ、二人は敬語で話していた。
(いつかは慣れてくるはず…。きっと)
もしかしたら昨日、優人が話していた『希望』が見えてきたのかもしれない。