「美奈さん、ごめんなさいね。
お父さんがあんな事言ったから
プレッシャーになったでしょ。」
義母は包丁の手を休める事なく美奈に謝った。
美奈はどの事か判っていたが、
判らないふりをして、包丁を置くと、
「なんの事ですか?大丈夫ですよ、私は。
お義父さんがおっしゃった事は
なに一つ気にしてませんよ。」
義母を安心させる様に笑った。
その笑みに義母も包丁を置き、
しばらく美奈の顔を見ていたがふっと笑うと、
「そう、それならいいの。
ごめんなさいね。変な事言って。
気にしないで頂戴。」
美奈はその笑みに昨晩の夫との行為に
気づかれたのではないかと思った。
こういう事は女性の方が鋭い。
だが、義母が言った通りに
気付かなかった事にした。
その方がお互いの為だと思った。