香は美奈に抱きつき、
「えへへ」
嬉しそうに笑った。
そして武と義父、義母の元へ駆け出して行った。
美奈も両手に義父達へのお土産と自分の荷物を持って
武達の元へ歩み寄った。
「お義父さん、お義母さん、お久しぶりです。
これ、近所で美味しいって噂の和菓子です。
良かったらどうぞ。お口に合うといいんですけど。」
土産を2人に差し出した。
義母は土産を受け取ると、嬉しそうに美奈を見つめ、
「そんなに気を使わなくて良かったのに。
でもありがとう。遠慮なくいただきますね。」
穏やかに答えた。
武の義母はおっとりとした人で多分、
武は母の性格を受け継いだのだろう。
反対に父の方は厳格で厳しい人だった。
結婚の挨拶をしに来た時率直に聞かれた事がある。
『もう、男とは切れているのか。
ちゃんと家に入れるのか。
それが出来ないならうちの嫁にはいらん。』
その時まだ『彼』と切れていなかったので正直ドキリとした。
だが、冷静に、
「私は武さんと結婚したいと思ってます。
その為に会社さえ辞めるのも構いません。
今までお付き合いしてきた男性とは今は連絡は取ってません」
白々しく嘘をついた。