私はもう一度インターフォンのカメラを覗くと、
まだ田中と名乗っていた男がうろうろしていた。こんなんじゃ、
コンビニにも行けない。私はしばらく指を噛んで、リビングの机に座りこんだ。
「どうしたんだよ。そんな難しい顔して。」
「芸能記者がまだ、うちの前にいるのよ。どうやったら追い払えるかしら。
あんな所にずっといられたら、ご近所にも変な噂が立っちゃうわ。
なんとか、早めに手を打たないと。」
「芸能記者はしつこいからな。俺が一言、言ってやろうか。」
「バカね。そんな事したら交際してます宣言してる様なものじゃない。
今、以上に記者が殺到するわ。」
そこへ、ミネラルウォーターを取りに来た紗由理が部屋から出て来た。
私は紗由理に相談する事にした。
「紗由理、今いい?」
「いいけど…。どうしたの?2人して難しい顔して。喧嘩でもしたの?」
それに対し光は、
「紗由理ちゃん、それは誤解だよ。
俺が愛する友梨香と喧嘩するとでも思う?」
「そんなの分からないわよ~。友梨香は気が短いからね。
貴方の軽率な発言が元で喧嘩になる事もありうるかもね。気を付けてねぇ。」
そう言うと自室に戻ろうとしたのを私が引き止めた。
「待って。今、紗由理の知恵が必要なの。」
「知恵ぇ?」
ミネラルウォーターを飲みながら振り向くと、紗由理はマヌケな声を出した。