高田君は真剣みたいだし、その誠意には答えなきゃね。
「あのね、高田君。」
私がそこまで言っただけで、高田君は直立不動になった。
なんだかかわいい。そんな事思っちゃいけないんだけど。
「高田君の気持ちは嬉しいけど、私は婚約者と結婚するって決めたの。
高田君が会ってもこの気持ちは変わらないわ。ごめんね。」
でも、高田君はそれでも納得しないみたいで、
「とにかく部長の婚約者に会わせて下さい。
それで俺が納得する様な男なら、俺諦めます。」
(会わせる訳いかないじゃないの~)
「あのね、なんて言ったらいいのかなぁ。彼も忙しい人だし、
人前に出るのが苦手なのよ。だから諦めて。」
(人前でコンサートなんてやっちゃう人だけど、忙しい事には変わりないわよね)
仕事も始まる時間だし、もうそろそろ退散したい。
そうよ。部長という特権を使って仕事に戻ってもらおう。
「高田君、話はよく判ったからもう仕事に戻りましょう。
彼にも会えるかどうか相談しとくから。」
「じゃぁ、会えるかもしれないんですね。
男同士で部長の話をしてもいいんですね。」