前回は森林の更新について見てきました。
樹種や環境は勿論、どういう森に仕立てるのか、目標である“最終林形”により更新方法にも違いがあります。
では、実際の育林作業としてはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、森林施行について取り上げたいと思います。
人工林では、多く皆伐方式が取られます。
一斉に苗を植える事で、管理を画一化できるメリットがあることはすでにご紹介しました。
皆伐跡地にはとうぜん切り株が残りますし、邪魔になる岩などもあるかもしれません。
まずは、植栽前に整地する事が必要で、この作業を「地拵え」といいます。
放置された皆伐跡地では、草本だけでなく低木なども入り込んでいる事もあるので、こういった植物を除くことも併せて行われます。
地拵えの次は、植栽の後で育林作業が行われます。1ha当たり3,000本が平均といわれます。
まだ稚樹の段階では、他の植物との競争に負けてしまうので刈り払う必要があります。
初夏の頃から始まる「下刈り」です。
下刈りは、保育のために行われる作業で、草だけではなく他の低木も一緒に切ります。
農業のほうで行われる雑木林の下草刈りとは違うので注意が必要です。
下刈りと一緒に「蔓切り」も必要です。
下刈りの方は、ある程度大きくなって被陰の影響が無くなれば良いのですが、蔓切りは成木になっても引き続き行われます。
文字通り蔓植物を切るのですが、なぜ必要なのでしょうか。
蔓植物は幹を伝って樹冠部で展開し、樹木を被陰します。
成長に伴って蔓も太さを増し、樹木を締め付けて生育を阻害し、ひどい時は枯死に追いやります。
さらに、樹冠部に絡みつくので重心が高くなると共に、雪などが積もりやすくなり倒木の被害を引き起こします。
自然林では、蔓植物が老木を間引いてギャップを生み出し、更新を促します。
ですが、林業にとっては厄介者で、藤などは初夏の彩りながら、手入れの悪い林の証拠とも言われます。
この辺の「目的による立場の違い」は、インタープリテーションの一つのポイントだと思います。
ある程度大きくなったら、「枝打ち」を始めます。
枝打ちの目的は、大きく二つあります。
一つは、節の無い木材を生産するため。
木材の節は、枝の脱落痕を組織の成長によって巻き込む事により生じます。
材中の節は美観だけでなく強度も損ねる事があり、早めに枝を落とすことで芯に近い段階で隠し、材面に出にくくする効果があります。
二つ目は、木を下(元)から上(末)まで同じ太さで育てるため。
当然、枝には葉が茂っており、光合成によって成長を司っています。
ということは、その部分の成長が良くなります。
下のほうまで枝があると元のほうの成長が早くなり、元と末の直径が違う「うらごけ(殺)」材となります。
こういった材は扱いづらく、材の価値が下がります。
ですので、樹冠の1/3程を残して枝を落とし、成長を抑制するのです。
人工林では、苗木を1ha辺り3,000本程度植栽するのが一般的です。
これは、成長を押さえて年輪巾の狭い緻密な材を生産するのと、風雪害の対策のためです。
ですが、成長に伴って林内が込み合うと、競争が始まります。
その前に、劣勢木を間引く「間伐」を行う必要があります。
間伐は植林木について行うものです。
下刈りの後に伸びてきて植林木の生育を邪魔する天然性の樹木を含めて、形質の悪い植栽木も切るのは「除伐」といい、区別されます。
始めの間伐が15年ぐらい、後は10年ごとに二回目・三回目という具合に、成長を見ながら間伐していき、最終的な材として伐り出す「主伐」に向けて木を、林を育てていくのです。
現在は、主伐の時期を長くする長伐期林業が推奨されつつあります。
これは、生態系と土壌の維持を目的としたもので、あわせて複層林として持続可能な生産が目指されています。
このように、木を育てるのは途方も無い年月と多くの手間がかかります。
ですが、木材価格の低迷や輸入材との競争により、国産材の需要が伸び悩んでいます。
戦後の復興期、政府主導の“拡大造林”によって植えられた人工林が全国にありますが、その大半が零細林家であり、経済的な理由から手入れが行き届かなかったり、放
置される森林も少なくありません。
市民の手による間伐をはじめとするボランティアによる施行も盛んですが、限界があるのも事実。
抜本的な解決策は無いのが現状です。
だからこそ、現場である山に実際入り、自分で感じること。
考えて行動に移すことが求められているのではないでしょうか。
森林インストラクターを目指した強い思いの一つとして、これからも持ち続け、活動していきたいと思います。