「音の春」
弥生を形容する表現です。
ちなみに、如月は光の春。
なんとなく柔らかさを感じさせる陽光に溶ける、雪解けの音…
フキノトウの似合いそうな光景ですね。
私の住む多摩では、先日の雪が所々残っています。
寒暖の差が激しい、気温のジェットコースターです。
日毎ならまだしも、一日の気温差も油断できません。
何を着ればよいのやら…
咲き急いだ花は平気かな?
日影沢の妖精たちです。
陽気に誘われたものの、この雪ではたまらないでしょう。
もっとも、霜にやられるぐらいなら、雪の下のほうが暖かいかも知れません。
スプリング・エフェメラル~春の妖精
落葉広葉樹の下に咲く草本で、早春の一時期しか見る事のできないことからそう呼ばれます。
だいたいが背丈はあまりなく、茎に花と少しの葉をつけます。
これは日光を遮るものが無い状態で、効率よく開花・結実を済ませ、かつ最低限の光合成をする春植物の生活史にあった姿だと思います。
植物は水分・日光・養分を必要とします。
もちろん、平等に与えられるはずも無く、そこには競争が生じます。
森林の内部は土壌も豊かで、養分・保水力共に兼ね備えた環境です。
反面、下層植生である草本類にとって、樹木は日光を遮る存在でもあります。
ですので、常緑広葉樹や針葉樹の森林は暮らしずらそうなのが想像できますね。
落葉広葉樹林はどうでしょうか。
同じように樹木は空を覆っています。
ですが、秋が過ぎ冬になれば、紅葉を迎えてやがては落葉します。
そこには、豊富な日光と水分・腐葉があります。
落葉広葉樹林は主に東北部に分布しますので、寒さと共に霜や雪がやってきます。
植物にとっては脅威そのものです。
長く厳しい寒さが去り、雪解けと共に春の訪れを迎える季節
-樹木が葉の展開を始めるまでの刹那-
ここに目(芽?)をつけたのが春植物です。
一年の大半を種子や地下茎の形で過ごし、あっという間に子孫を残して地上から消えてしまう。
樹木との折り合いから実に付けた、処世術といったところでしょう。
ランやスミレの仲間、カタクリ等が代表格です。
最終氷期、落葉広葉樹林は今の関東を覆う勢力を振るっていましたが、気候の温暖化に伴い北上していきました。
現在は常緑広葉樹林が優勢で、事実、放っておけば樹林内に常緑樹が侵入してきます。
(別に、ワルモノという訳ではありません。念の為。)
その時に取り残されたのが、今関東で見られる落葉樹林。
人為的に選択されて残されたという説もあります。
ともあれ、そうした中で落葉広葉樹林と共に生きてきた春植物。
レッドデータにリストされる種もあります。
元は寒冷な気候に対応してきたので、温暖化の影響は少なからず受けているでしょう。
常緑樹の進出も目を見張るものがあります。
なにより、落葉樹林は人の手によって保たれた「自然」であることは大きな意味を持ちます。
具体的には里山の二次林=雑木林です。
農用林や薪炭林として整備されてきたのですが、近代化に伴う石油革命や化学肥料導入により放置・荒廃が進んでいます。
実は春植物、適度な攪乱を好みます。
下草狩りや落葉掻きによってある程度地表面が荒らされた方が、発芽や種子散布に有利なのです。
いわば、人為的攪乱と共に生きながらえてきたという面を併せ持つのです。
保護と保存と保全―
環境を考える難しさは、この辺にあります。
林地等の保全を考える際は、このような希少な植生も鑑みながら、景観・文化、そして市民の参加=地域住民の生活との兼ね合いを併せて考える事が必要です。