森林の遷移 | 目指せ!森林インストラクター。

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日本の山を元気にしたい!
そんな思いから、森の案内人「森林インストラクター」の資格を取りました。

自然は私達に、たくさんのメッセージを投げかけています。
その声は、あまりにも小さく儚いものです。

そんな「森の囁き」を、お伝えします。

今日は春分。



暦の上ではもう春だというのに、厳しい寒さが続きます。



まだ多摩では、先日の雪がとけ残っています。朝の辛い季節ですね。





二月に入り、今年度のインストラクター養成講習の日程が決まったようです。



http://www.shinrinreku.jp/yoseikoshu/yoseukoshu_gaiyo.html



受験なさる方は、受けてみても良いと思います。





もう勉強を始めている方もいらっしゃるでしょう。



拙いコラムですが、少しでもお力添えになれば幸いです。







さて、前回は森林の植生分布についてとりあげました。



続いて、遷移について見ていきたいと思います。





今やどこを見渡しても林野の広がる日本ですが、始めから鬱蒼としていた訳ではないはず。



原野の言葉があるように、荒涼とした土地から自然が移り変わってきた結果です。





何も無い岩肌にさえ、コケ類は僅かな養分と水とを得ながら繁殖し、自らを土へと還していきます。



風雨の浸食を受けて砂礫が生まれ、コケ等の遺骸と混じって有機物を含む土が生まれます。





徐々に草本が入り込み、根を張ることで土の移動が防がれて安定します。



草も枯れますから、土壌へと帰っていきます。





こうしてある程度の堆積ができると、ようやく樹木の出番です。



勿論、灌木や低木と呼ばれるものですね。



土壌の安定しきらない斜面に見られるアブラチャンのような種が多いです。





次に、先駆種であるパイオニアの出番です。



河畔のような湿性土壌ならヤナギ類、乾いたところはケヤキ等の落葉樹が斬り込んできます。



マメ科の樹木も忘れてはなりません。



彼らは「根粒菌」という強力な支援者を味方につけ、空気中の窒素を土壌へと固定します。



肥料木とも呼ばれ、外来種の問題はありますが緑地回復の切り札として利用されています。



(ニセアカシア等は肥料木として崩壊地の緑化に利用されるが、その強い繁殖力から河川の生態系への影響が危惧され、導入の際に慎重な検討を有するようになりつつある。)





これらの落葉広葉樹は明るく開けた土地を好むので、「陽樹」と呼びます。





次に出てくるのは、陽樹による被陰の下でも育つことができるやや耐陰性のある種です。



だいたいこの辺の種が主役となり、森林を形成することが多いようです。



東日本ではコナラ等の落葉樹、西日本ではシイ類を中心とした常緑樹が優先していきます。



林床には草本や低木類も顔を揃え、高木層・亜高木層・低木層・草本類・コケ類を従えた階層構造が発達していきます。





土壌も豊かになり、老木や枯損木も見られるようになっていきます。



この段になって、ようやく出てくる大真打は「極相種」。



ブームになったブナ等が代表選手です。





勘違いをされる事もありがちなのですが、ブナ自身(?)が豊かな森を形成するのではなく、森が豊かになった結果、ブナの生育できる環境になったのです。





ですので、伐採後の裸地へブナを植栽しても、余り定着する例はないようです。



ブナが貴重というよりは、ブナの育てるような森林環境こそが重要なのです。





森林遷移の段階でゴールを飾るのが、極相状態。



構成種も安定し、成長量と枯損量が釣り合った状態です。







では、極相に達すれば終わりかというと、実際は森林内には様々な遷移段階が混在しています。



土砂の崩壊や風害・大木の枯損等により、空白地が点在しており、この空き地を「ギャップ」と呼びます。



ギャップでは、それぞれの状態からまた遷移が始まるのです。



そこには違った植生や環境が生まれ、生物の多様性にも寄与しています。





土地により気候や土壌の状態が違うように、極相状態にも差が出ます。



森林限界付近では、ハイマツ群落で遷移が止まってしまいます。







その土地の遷移や植生から、なぜその種がそこに生育するのかを考える。



あるべき森林の姿を知り、守り伝える。







森に親しむ第一歩は、その姿を知ること。



自然は常に、何事かを私たちに囁いています。