スプラウツに通ってきてくれる生徒さんの中には、
よく似た共通点を持っている子が少なくありません。
それは、
カバンの中が整理されていない
プリントがぐしゃぐしゃになっている
自分の机の上に、何がどこにあるのか分からない
という状態です。
時には、
「このプリント、どこにある?」と聞いても
本人も首をかしげてしまうことがあります。
こうした様子を見ると、
大人はついこんな言葉をかけたくなってしまいます。
「ちゃんと整理しなさい」
「だらしないよ」
「勉強する前に、まず片づけでしょ」
ですが、
スプラウツの現場で子どもたちと関わり続けていると、
それは原因ではなく、結果である
ということが、はっきりと見えてきます。
散らかりは「怠け」ではありません
整理ができていない状態を見ると、
「性格の問題なのでは」
「やる気がないのでは」
と思われがちです。
しかし、実際にはその逆であることがとても多い。
心が疲れていると、人は整理ができなくなる
のです。
心に余裕がないとき、
人は
-
目の前の情報を処理する力
-
先を見通す力
-
一つ一つを整えるエネルギー
を失っていきます。
片づけとは、
実はとても高度な行為です。
「これはどこに置くか」
「これは必要か不要か」
「今使うものか、後で使うものか」
こうした判断を、
心が疲れている状態で行うのは、
大人でも簡単なことではありません。
整理できないのは「能力」ではなく「状態」
スプラウツに通う生徒さんの多くは、
決して能力が低いわけではありません。
むしろ、
感受性が高かったり
周囲の刺激を強く受け取ってしまったり
とても繊細なアンテナを持っている子が多い。
そうした子どもたちは、
日常生活の中で
人一倍、心のエネルギーを消耗しています。
学校
人間関係
集団の空気
音や視線
それだけで、
心がいっぱいになってしまうこともある。
その状態で
「整理まで頑張ろう」と言われても、
それは酷な話なのです。
いきなり「自分の部屋を片づけよう」は難しい
ご家庭でよくあるやりとりがあります。
「まずは自分の部屋を片づけよう」
「自分のことなんだから、自分でやりなさい」
もちろん、
自立という意味では正しい方向です。
ですが、
心が疲れている子にとっては、
いきなりの“自室整理”はハードルが高すぎる
ことが多い。
なぜなら、
自分の部屋は
-
一番物が多く
-
一番感情が詰まっていて
-
一番「できていない自分」を突きつけられる場所
だからです。
順番を変えてみませんか
そこで、
スプラウツとしてよくお伝えしているのが、
順番を変える という考え方です。
最初に整えるのは、
子どもの部屋ではありません。
家の中の共有空間 です。
リビング
ダイニング
玄関
廊下
どこでも構いません。
「ここに来ると、なんだか落ち着く」
「探し物をしなくて済む」
「余計な刺激が少ない」
そんな場所を、
家の中にいくつか用意してあげてください。
環境は、言葉よりも先に心に届く
人は、
言葉よりも先に
空気 を感じ取っています。
整った空間
静かな配置
視界に余計なものが入らない状態
それだけで、
心は少しずつ緩んでいきます。
「ここでは、急がなくていい」
「ここでは、間違えてもいい」
「ここでは、安心していい」
環境は、
そうしたメッセージを
言葉を使わずに伝えてくれます。
快適さを“体感”すると、行動は自然に変わる
人は、
正論で動くのではありません。
「こうした方がいい」
「こうするべきだ」
そう言われて動けるのは、
心に余裕があるときだけです。
一方で、
快適さを体で知った人は、自然に真似をします。
整ったリビングで過ごす時間が増える
↓
「探さなくていいって楽だな」
↓
「この状態、いいな」
↓
自分の机にも目が向き始める
こうした変化は、
注意や叱責では起きません。
体感からしか生まれない変化 です。
物を探す時間は、心を削る時間
「どこに置いたっけ」
「さっきあったはずなのに」
物を探す時間は、
思っている以上に
心とエネルギーを消耗させます。
特に、
不安を抱えやすい子どもにとっては、
探し物が見つからない時間そのものが
ストレスになります。
整理とは、
几帳面さの問題ではありません。
心を守るための工夫 なのです。
整理は「心を整える練習」
環境が整う
↓
心が落ち着く
↓
思考が静まる
↓
勉強や活動に向かいやすくなる
この流れは、
多くの生徒さんで共通しています。
整理ができるようになると、
それは
「できるようになった」という成功体験
にもなります。
自分は
整えていい存在なんだ
安心していい存在なんだ
そんな感覚が、
少しずつ心に根づいていきます。
ご家族と一緒につくる「整った空気」
最後にお伝えしたいのは、
これは
子どもだけの課題ではない
ということです。
ご家族がつくる空気
ご家族が過ごす空間
その影響は、とても大きい。
「片づけなさい」と言う前に、
まずは
一緒に整った空気をつくる。
それが、
最もやさしく、
最も効果的な支援になることがあります。
おわりに
心を元気にするために、
特別なことをしなくてもいい。
まずは、
探さなくていい場所
落ち着ける場所
を、家の中につくること。
その積み重ねが、
やがて
自分の空間
自分の持ち物
自分の心
を整える力へとつながっていきます。
環境を整えることは、
心を大切にすること。
スプラウツは、
そんな視点からも
子どもたちを支えていきたいと考えています。
🌱
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所 代表理事
聡生館/Sprouts フリースクール代表)
