「Do your best and it must be first class」
この言葉を遺した人物として知られているのが、
ポール・ラッシュ です。
この言葉は、一見すると、とても厳しい言葉に聞こえるかもしれません。
「最善を尽くせ」
「しかも一流であれ」
今、心が疲れている子どもや、
学校に足が向かなくなっている子どもに向けて語るには、
少し強すぎる言葉のようにも感じられます。
けれど私は、スプラウツの現場で子どもたちと向き合う中で、
この言葉ほどやさしく、そして深い言葉はないのではないか、
そう思うようになりました。
「一流であれ」という言葉が、重く感じられる理由
不登校や登校しぶりの相談を受けていると、
多くの子どもたちは、すでに心のどこかで
「自分はだめだ」
「自分はできない」
という感覚を抱えています。
その状態で「一流になれ」と言われたら、
どう感じるでしょうか。
おそらく、
「自分には無理だ」
「どうせ期待されていない」
と、さらに心を閉じてしまうかもしれません。
だからこそ、ここで一度立ち止まって、
ポール・ラッシュの言う “first class” とは何だったのか
を、丁寧に考えてみたいのです。
first class とは、結果のことではない
スプラウツに通ってくる子どもたちの多くは、
決して「怠けて」いるわけではありません。
むしろ、
・人一倍気を遣ってきた
・期待に応えようとしてきた
・頑張り続けて、疲れてしまった
そんな背景をもつ子が、とても多い。
もし first class が
「成績が良いこと」
「人より優れていること」
を意味しているのだとしたら、
この言葉は、多くの子どもたちを救うどころか、
さらに追い詰めてしまうでしょう。
けれど、ポール・ラッシュの歩みをたどると、
彼が大切にしていたのは、競争や選別ではありませんでした。
彼が見ていたのは、
一人ひとりが、自分の立っている場所で、誠実に生きているか
という一点だったのではないかと思うのです。
Do your best とは、「今の自分を否定しない」こと
スプラウツの現場では、
「今日はここまでしかできなかった」
「何もする気が起きなかった」
そんな日が、決して珍しくありません。
でも、それは「後退」ではありません。
心が回復していく過程は、
一直線ではなく、
波のように上下しながら進んでいくものだからです。
Do your best とは、
限界まで頑張ることではありません。
それは、
その日の自分の状態を正確に感じ取り、
その範囲で、ほんの一歩だけ前に出てみることです。
・今日は教室に来られただけで十分
・今日は話を聞くだけで精一杯
・今日は何もできなかったけれど、来ようとした
それらすべてが、その日の best です。
勉強以前に、必要なものがある
学校に行けなくなった子どもたちは、
よく「勉強が遅れていること」を心配されます。
もちろん、学習の再構築は大切です。
けれど、それ以上に大切なものがあります。
それは、
「自分はここにいていい」という感覚です。
この感覚がないまま、
勉強だけを積み上げようとしても、
心はなかなかついてきません。
スプラウツでは、
勉強を始める前に、
まずこの土台を整えることを大切にしています。
考えることを、取り戻す
多くの子どもたちは、
学校生活の中で、いつの間にか
「考えること=苦しいこと」
になってしまっています。
・間違えると怒られる
・遅れると置いていかれる
・正解できない自分が恥ずかしい
そんな経験が重なると、
人は自然と、考えることそのものを避けるようになります。
だからスプラウツでは、
「正解」を急ぎません。
それよりも、
「どう思った?」
「どこで止まった?」
という問いを大切にします。
考えることを、
もう一度「安全な行為」に戻すためです。
first class の学びは、とても静かに育つ
スプラウツでの変化は、
外から見ると、とても小さなものです。
・表情が少し柔らいだ
・自分から話し始めた
・ノートを開く時間が増えた
けれど、それらはすべて、
心の中で何かが動き始めた証です。
first class の学びとは、
派手な成果ではありません。
自分の内側の動きを、
自分で感じ取れるようになること。
それができるようになると、
学びは、もう壊れません。
受験や進路は、その先にある
スプラウツに通う時間は、
人生の「立て直しの時間」でもあります。
ここで取り戻すのは、
成績だけではありません。
・自分の感情を感じる力
・分からないことを抱えていられる力
・すぐに答えが出なくても、立ち止まれる力
これらは、
どんな進路を選ぶとしても、
必ず支えになります。
最後に
もし今、
お子さんが動けなくなっていたとしても、
それは失敗ではありません。
それは、
これまで無理をしてきた証かもしれないし、
これから立て直すための準備期間かもしれません。
ポール・ラッシュの言葉は、
そんな時間を生きている子どもたちに、
こう語りかけているように思います。
「あなたの場所で、
あなたのペースで、
あなたなりの最善を尽くせばいい」
それが、
first class の生き方なのだと。
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by Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所 代表理事/
聡生館&Sprouts フリースクール代表)