1993年・春
うまい事ビジブル・ファッカーに加入した俺。
当時のビジブルファッカーのメンバーは
Vo・カサイ Gu・ノムラ Dr・キンタ。
そしてBa・俺。
この時、ギターのノムラは入院中で、俺が加入した事は知らなかった。
じゃあ、俺の加入報告も兼ねて見舞いに行ってみるべぇ。
と、ボーカルのカサイと一緒に都内の病院へ足を運んだ。
カサイは昼間っから電車の中で焼酎を呑みだした。
俺はこの頃はそんなに酒を呑む野郎ではなかったので、カサイの呑みっぷりに驚いた。
車中、俺とカサイはまだそんなに親しい仲ではなかった為、話もそれほど盛り上がらず、俺は僅かながらに息苦しさを感じていた。
しかし、カサイは、そんな空気にも我関せずといった感じで、グビグビと焼酎を煽る。
カサイは、今も昔も他人にあまり興味がナイ。
頭はイイはずなんだが、ハナっから「賢い」なんて言われる事に興味がナイ感じなのだ。
ちょっと変わってる野郎である。
病院に着くと、通路の奥から車イスに乗った男が爆走してきた。
その車イスの後ろには数人の子供達。
爆走車イスのパイロットはノムラだった。
顎の手術だったので、足は健常なのだが、病院内を車椅子に乗って移動しているらしい。
入院中の子供を手下にし、車椅子を押させていた。
「あぁ、ノムラらしいな・・・」と思った。
ノムラはカサイよりも変わってる野郎なのだ。
おう、見舞いにきたぜ。
おぅ。
ノムラは、突然の見舞いに喜ぶ事も驚く事もなく、素通りするかの様に病室へ入っていった。
病室に入り、今後のバンドの活動を話合ったのだが、ノムラは頭から顎まで包帯で固定されていたのでマトモに喋る事ができなかった。
おぅわ、らうげぅのなかがいたいいんできう
どうやら「俺は来月の半ばには退院出来る」と言っているらしい。
だが、他人に無関心なカサイは容赦ナイ。
あ?なに言ってっかさっぱりワカンネェよ?ちゃんと喋れよ
俺は、そんな事を真顔で言ったカサイに驚愕した。
ノムラの顔を見ると、ちょっと怒っている。
彼らとまだあまり親しくない俺は困惑した。
こいつら、いつもこんな調子なのか・・・?
そんな調子で、話しはつっかえつっかえしながらもなんとか進展。
さて、じゃあ、ノムラの退院までギターをどうするか?
検討した結果、スタジオ練習はマーガレッツのウダに頼んでみようという事になった。
これは新参者の俺としては大変都合がイイ。
ウダが俺とメンバーのパイプ役になってくれるし、もしスタジオ練習でベースを上手く弾けなかったら「やっぱ、ギターが違うから雰囲気変わってやり辛いなぁ~」と言い訳出来る・・・と卑怯な思惑があったのだ。
数日後。
スタジオに入る事になったのだが、またしてもカサイの言動に驚愕した。
来週、スタジオ入っからさ、あ?場所?スタジオペンタ。場所わかる?シラネ?誰かに聞けばすぐわかるよ、じゃ。
おいおい、誰かって誰だよ・・・?
俺は不安な気持ちで電車に乗り千葉へ向かった。
数十分後。
千葉駅に到着し、さてどうしましょう・・・?
閃いた!スタジオの事ならばバンドマンに聞けば確実だ!
早速、ライブハウス・千葉LOOKに行ってみる。
店先には若者達がたむろしていた。
知ってる奴はイネーか?と辺りを見回す。
いた!
鎖骨ギプス発見!(the Big Jet Mouse #5参照)
失礼でアホな野郎だと思っていたが、こんな時には頼りになる男に見えた。
砂漠のオアシスを見つけた気分になり、微笑みながら鎖骨ギプスに声を掛けた。
おぅ、ひさしぶり!あのさ、スタジオペンタってドコにあるの?教えてくんねぇ?
あぁ、ペンタですか?ペンタならすぐ近くですよ。なんなら案内しますよ!
こんな答えが返ってくるものだろうと思っていた。
カッコイイライブをやっていた先輩が困っている。
デモテープを郵送してくれた先輩が困っている。
マーガレッツの情報を教えてくれた先輩が困っている。
こんな時こそ、僅かながらの恩返し。イッチョ俺が案内しようじゃありませんか!
と思うのが普通であろう?と思っていた。
うぬぼれ過ぎであろうか?
しかし、現実は俺の予想をくつがえす。
鎖骨ギプスの口から、こんな言葉が滑り出してきた。
は?ペンタの場所も知らネーんですか?
え・・・?
千葉の人ってみんなこんな感じなの?
俺、今まで千葉ナメてたかも・・・
俺の心の中に暗雲が立ち籠める。
恩知らずのムカつく野郎だった・・・















