2513年1月13日
戦争終結から約一ヶ月。企業連の会議は幾度となく開かれた。
まず、最も先に決まった事は国無き今、価値の分からなくなってしまった貨幣の統一だ。
これからの世界は新しい貨幣「コイン」に変更される。
無論それぞれの貨幣価値などはどうする?と言う問題はあったが、この会議に出席しているメンバーは言わば全員が「商人」である。
金勘定に関して商人の右に出るものは存在しない。
しかも、この場にいるものはどんな形であれ国家解体戦争を生き残った商人達なのだ。
さして時間を掛ける事もなく、貨幣に関する問題は解決した。
このまま平和的に解決してくれれば・・・・という希望はすぐに露と消えた。
我田引水とはまさにこの事だろう。
今まで手を取り合ってきた筈なのに、国家という邪魔な存在が消えた瞬間、如何にこの会議から自分だけに利益を引っ張れるか画策し、1人1人が強引に話しを進め始めた。
先程までの平和的な話し合いとは違う。
金勘定に関して右にでないものは商人であるが、手のひらを返す事に関して右にでないものもまた商人であるのだ。
お互いの腹の内を探り合っているのが目に見えて分かった。
人間の欲望は本当に果てしない。
この会議に参加している15人の中に民間人を心配する物はいないのだろうか?
・・・恐らくいない。
でなければ「世界をどうするか?」と言っても過言ではないこの会議がこんなにも早く終わる事はないし、こんな結論に至るはずかない-。
企業はとりあえずの大まかな住み分けとして大規模民間収容施設の建設を提案した。
名目は戦争により住む事の出来なくなった地域の人々に新たな居住スペースを作るため。
だが、実際は違う。
企業は自分の帝国を築き上げるつもりだ。
国がない場所に大規模な居住スペースを作るという事は新たな「国」 を作るのと同義。
そんな事をせずに世界中が協力し合って復興に力を注げばいいはずだ。
そう私が提案してもなんだかんだと理由を付けて施設建設を押し通して来た。
どうやら私はこの状況を利用しない無欲の奇人、変人だと思われているらしい。
いまは耐えるしかない。こんな所で反感を買えば14の企業は簡単に私の命を消すだろう。
・・・耐えるしかない。
せめて私だけでもこの世界の良心で居なければ。
旧日本
暁工業社長
暁 光破