『食品業界ホントのところ』 -19ページ目
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食品工業における衛生管理とは? ―その3―

さて、第3話です。

みなさまお待ちかね、いわゆる
『食品業界の菌についての取扱』について
お話させて頂ければ、と思います。

今回は、便宜上細菌等々を合わせて菌と
呼ばせて頂きます。


今回も皆様の常識が崩れるような『えっ?!』
という事実を書いていきたいと思います。
多分、驚くと同時に『なるほど』
と納得して頂けること間違いなしと思います。


さて、菌による食中毒を防ぐために、
どのような管理・オペレーションを
行っているのか、皆さんお知りに
なりたいかと思います。

そこでご家庭でもできる基本の基本、
3大原則について書かせて頂きます。


と、その前に・・・。
皆様、菌による食中毒って
『腐った物を食べて起こる』
だと思われていませんか?

現在ではそのような食中毒はかなり
減ってきております。

つまり、臭いや粘り等々ではわかる食中毒は
減ってきており、無味無臭、いつの間にか
毒性の強い菌に汚染されている食中毒が多く
見受けられるようになってきたのです。


これはおそらくなのですが、
この10年でノロウイルスの正体が突き止められ、
検査キットが開発されて迅速に発見されているように、
様々な菌についての研究結果が出て来たために
毒性の強い菌による食中毒の発見数が増えた事と、
菌に対する消費者の知識が向上し衛生度合いが
高まったため、一般の菌による食中毒が
低下した事が原因として考えられます。


私が比喩で良く
『原子が発見される以前から原子はあった』
と使っております。

要は『もとからあって発見されてなくとも
存在はしていてそのものが無かったわけではない』、
という意味で使っているのですが、
海外から侵入した病原体で無い限り、たぶんこの比喩が
当てはまる事象だと思われます。


さて、菌による食中毒に対しては食中毒の3大原則を
適用する事で大方防ぐ事が出来ます。

その3原則とは、
1.付けない(清潔)
2.増やさない(迅速、冷却、乾燥)
3.殺す(加熱など)

たった3つです。『え?!簡単じゃないか』と
思われるかと思います。しかし、実はこれが
本当に難しいのです。


その難しさを説明するに、次回は菌による
食中毒をさらに細かく説明させて頂きたく存じます。


それはなぜか。
大体において、菌による食中毒事件が起こるたびに
報道で食中毒についての呼びかけが行われるのですが、
3大原則と菌の関係を深く結びつけたものが
少ないのが現状です。


ここをしっかりと結びつけなければ、
表面的な理解によって原則が徹底されないという事に
なってしまいます。


実は肉の生食に関してもこの部分がしっかりと
結びついていなかったが為に起こったと言っても
過言ではありません。



次回いよいよ核心に触れます。

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食品工業における衛生管理とは? ―その2―

さて、第1話で早速脱線してしまいました…。すいません。
しかし、大事な所なのであえて遠回りしてでも抑えさせて頂きました。


菌の話に戻りますが、菌と言いましても
我々がイメージするもの と
学問として厳密に規定されている物 は実は違います。

そうです、定義の問題ではありますが、また常識とホントのとこ
違うのです。

どういう事かと申し上げますと、通常菌とひとくくりにしていますが、
病原体に限って考えても細菌ウイルス原虫カビ酵母などに
実は分けられます。

そして学問的に菌類と言ってしまうと、このうちのカビや酵母になってしまいます。
どれも同じく危険と言われればそれまでなのですが、相手にする種類が違うと
しなくてはならない工程がまるで違ってくるのです。


だんだん、
「なんかややこしい事になって来たぞ…。衛生管理にいつたどり着くんだ?」
と思われた方もいらっしゃるかと思います。

すいません…。しかしながら、この『ややこしい事』こそが重要なのです。


本来、食中毒を回避する為のオペレーションは病原体や、
化学物質、自然毒など原因が多岐に渡り、それぞれが
同じ管理で対応できる所もあれば、全然違う対応が必要な所もあります。

もちろん必要のない場合もありますので、その場合は除外します。


また、さらに病原体だけでも上記のような種類について必要に
応じて考えなければなりません。そして、病原体をさらに細かく、
例えば細菌一つ一つの種類を分けて考えて特徴を踏まえ、
必要な対策を考えねばなりません。

そして、当然その他の危険な物に関しても同じように細かく
考えなければなりません。


さらにさらに、それ以外の危険全般、例えば異物混入などについて
目を光らせなければなりません。これらを含めて『衛生管理』と
言うのです。


実際の所、菌による食中毒の回避は『衛生管理』の一部にしかすぎません。
一口に『安心・安全な食べ物』といっても、簡単には作る事が出来ないのです。


つまり、単に『衛生管理』という部分だけを考えてみても、
とんでもない量の知識を入れ、それを精査して工場内で実行しやすい形にデザインし、
さらには実行しなければなりません。


実行というのは、実際に運用しなければ全く意味がないという意味です。
頭でっかちで行動が伴わなければ全く意味が無いのです。

難しい工程の衛生管理規格を持っていた旧森永乳業が大規模食中毒事件
を起こした事は記憶に残っておられるかと思います。
規格を作るだけでは意味が無いのです。

だからこそ、工場には衛生のプロが常駐し、そこで働く方々が一丸となって
管理・運営を行う必要があるのです。


このようにして緻密にそしてしっかりと『衛生管理』された
食品工場から出てきた製品によって起こる食中毒は通常少なく、
なあなあで行われている所で食中毒が起こるわけです。


実際に、去年平成22年度に起こった厚生労働省が把握している
食中毒の発生件数は1,254件、そのうち1,065件が原因となった施設が
判明しております。

そしてその原因となった施設がわかった中で、実に62.2%が飲食店
家庭が14.6%となっており、製造所は0.8%となっております。

(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/04.html#4-2 
 厚生労働省 食中毒統計資料より 過去の食中毒発生状況平成22年を引用)


このように、実際の所食品会社で働いている人間は、消費者の皆様に
苦労して苦労して食べられる物をお出ししております。

もちろん、モラルに欠けた運営をしている工場もあることは事実です。
それでも食中毒を出すような工場や人間は全体からみれば決して
多くないという事だけはご理解頂ければ、と思います。

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食品工業における衛生管理とは? ―その1―

こんにちは。

いよいよ、記念すべき『食品業界ホントのところ』
第1回目のお話を書かせて頂きます。


今回のテーマとしては、Facebook上のアンケートで
最も多かった衛生管理についてお話させて頂ければ、
と思います。


さて、衛生管理については、実際の所多岐にわたります。
まずはそこからわかりやすく解説をしていきたいと思います。

そして、やや専門的なお話をさせて頂きたいと思います。

ここを押さえないと、なぜ食中毒が起こるのか、
消費者の皆様方の手に来るまでに食品がどのような工程を経てやってきているか、
食中毒を起こさないために何をすべきかがわからず、
おそらくは結局のところ真実から遠ざかってしまうものと思います。


実際に私が報道を見ている中で、食中毒について理解していない人が作った
一部報道記事や番組で
、生肉食による集団食中毒事件の解説が
ちょっとずれていて、本来すべきはずの真実から
遠ざかっているものもありました。


衛生管理について皆さんがかなり関心を持たれている事と
思います。通常の食品工場の日常から、実際にどのような
作業をしているのか、食中毒を防ぐには本当はどうするべき
かについて掘り下げられればと思います。



まずは、日本の法律が定める所の食中毒と
皆さんの考える食中毒の違い
、そして最新の食中毒事情について
押さえて参ります。ここを押さえれば、衛生管理の複雑さが
わかって頂けるかと存じます。


と・・・。ここで疑問を持たれた方、結構いい感をされています。


『食中毒って菌によっておこされるんじゃないの?
 なんで日本の法律で定められている食中毒をなんて
 書いてあるの?』と。


実は、食中毒とは食によっておこされる健康障害全般を指し、
取り立てて菌によっておこされる事象だけを指したものじゃないのです。


食中毒の本当の意味は、
『食べて毒に中る(あたる、身体などに具合の悪い触れ方をする。)』
という事で、食べて害がある事全般を指します。

原因が化学物質であっても、自然界にある毒キノコや
ふぐによる毒によっても、腐ったものを食べてお腹を下しても
食べて害があった場合は全て食中毒となります。


まずはこの事実を一つ覚えて頂ければ、と思います。

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※ちょっと核心まで遠いので面白くないかもしれません。その時は
 コメント欄や私のFacebook、twitterアカウントまでご質問やご要望
 をお寄せ頂けますと助かります。個別に可能な限りお答えさせて
 頂きたいと思います。

 なお、一部知識人が良くやる『知識の自転車操業』はなるべくしないように
 心がけております。私がわからないことはお答えできませんのでご理解
 頂けますようお願いいたします。

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