豊田市民芸館 2026/7/12
「アーツ・アンド・クラフツとデザイン -そして民藝」展いってきました。
第一展示室でモリスのテキスタイルや壁紙、第二で食器や工芸品家具その他の陳列で、遠景以外は撮影不可でした。(モリスの作品は様々な所で見れますから撮影可で良いと思うのですがね)
今回は展示内容とは違うお話です。
「アーツ・アンド・クラフツとは何か」と問われたら、あなたは何を思い浮かべますか?
花や草をモチーフにしたモリスの壁紙やテキスタイルを思い浮かべる方が多いでしょう。
本来はイギリスからヨーロッパ・アメリカへ広まったルネッサンスにも匹敵する19世紀の大きな文化運動なのに なぜ?
18世紀後半、イギリスで始まった産業革命により機械による大量生産が進みました。しかしその一方で手作り製品の芸術性や職人の技術が失われていきました。
こうした状況から、19世紀後半にジョン・ラスキン(1819–1900)が、もう一度手仕事の美しさ、職人の手仕事による上質なものづくりを見直そうと生活と芸術の一体化を目指しアーツ・アンド・クラフツ運動を提唱し、このラスキンの思想を受け継ぎ中心となり活動したのがウィリアム・モリス(1834–1896)です。
この運動は、芸術を美術館だけのものではなく、住宅や日用品など生活全体に取り入れようとする生活と芸術を結びつける芸術・工芸運動で、建築から始まり、家具・ステンドグラス・陶芸・金工・テキスタイル・壁紙・本の装丁・印刷など、生活空間のあらゆる分野に広がりました。
その理念は、その後の大きなデザイン運動に多大な影響を与えていきます。
・アール・ヌーヴォー
ミュシャやクリムトの絵画や エミール・ガレ、ルネ・ラリック等のガラス細工、アントニオ・ガウディ等 (ジャポネスクの影響も含めて)自然の植物や曲線を生かした装飾様式。
モリスの自然観や工芸重視の考えを受け継ぎました。
・アール・デコ 直線や幾何学模様を特徴とするデザイン。
機械生産を取り入れながらも、「生活を美しくする」という思想を継承しました。
・バウハウス
1919年にドイツで設立され、芸術と工業・建築を統合し「機能的で合理的なデザイン」を追求した造形思想・様式
・モダンデザイン
20世紀初頭に始まり、機能性と合理性を追求した“装飾性を排除した”デザインスタイル
コルビジェやフランク・ロイド・ライト
「使いやすく、美しいものをつくる」という考え方は、現在の建築や家具、プロダクトデザインへと受け継がれ、そして現代にも多大な影響を与えています。
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このようにイギリスからヨーロッパ・アメリカへ広がった、ルネサンスにも匹敵する19世紀の大きな文化運動であるにもかかわらず、なぜ「アーツ・アンド・クラフツ=モリスの壁紙」というイメージが定着し、運動全体を覆い隠すほどになってしまったのでしょうか。
その理由の一つは、モリスが思想家である以上に優れたデザイナーであり、多くの作品を残したことにあります。家具・壁紙・テキスタイル・ステンドグラス・書籍デザインなど幅広い分野で活躍し、イギリスの伝統にジャポネスク(19世紀後半にヨーロッパで流行した日本趣味)やアフリカンアートの影響も取り入れながら、花や草、鳥をモチーフにした緻密で美しいデザインを数多く生み出しました。
こうした壁紙やテキスタイルは、建築や家具に比べて紙や布が主体のため扱いやすく、モリス商会(Morris & Co.)を通じて広く販売されました。さらに、美術館や展覧会、教科書などでも紹介しやすく、繰り返し取り上げられてきたことから、「アーツ・アンド・クラフツ=モリスの壁紙」という印象が強く定着したのでしょう。
ウィリアム・モリスの作品は、19世紀イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を代表する 「手仕事の美しさ」と自然モチーフを重視した高級工芸デザインとして、美術史・デザイン史において高く評価されています。
モリスは富裕層の高級品ではなく、「一般の人やすべての人のための美しい生活」を理想に掲げましたが、手仕事と天然素材へのこだわりから作品は高価となり、実際には富裕層に限られるという矛盾を抱えていました。それでも本物の織物や熟練職人によるハンドプリントは、現在でも美術品・高級インテリアとして高い価値を保っています。
私は子どもの頃から何度もウィリアム・モリスの作品を目にしてきましたが、どれほど見ても不思議と心を惹かれることはなく、多少「美しい」ものもありますが、特に何も感じないし、それほど高級感も持ちませんでした。
その理由を考えると、モリスのデザインは、緻密に構成された植物文様は調和が取れていて完成度は高いものの、その均整の取れた反復性ゆえに、私にはモザイクタイルのように整然として実用的でありながら、どこか平均的で印象に残りにくく感じられます。
ミュシャやLEONARD(レオナール)のような華やかな装飾性とも、自然な草花でもなく、手織物の暖かさとも違い、プリミティブアートに見られる素朴な手描きの温かみとも異なる、和の模様もとりいれたものもあるが表現がなんか中途半端でどちらでもない安全な表現だからではないかと思いました。
振り返れば、この「きれいだけれど心に響かない」モヤモヤ感覚こそが、子どもの頃から抱いていた漠然とした違和感の正体だったのかもしれません。
次回はアーツ・アンド・クラフツ運動と民藝運動について書きたいと思います。
アーツ・アンド・クラフツ運動も民藝運動も共に「手仕事の価値と暮らしの中の美」を追求した運動でしたが、
アーツ・アンド・クラフツ運動は消えていき
民藝運動は今も生きている。
なぜでしょう。
柳宗悦とウィリアム・モリスの違いも含めて。
豊田市民芸館展覧会
「アーツ・アンド・クラフツとデザイン |そして民藝」
2026年06月20日(土)〜2026年08月30日(日)
