七夕 | foo-d 風土

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 いにしへに

  織りてし服(はた)を

    この夕(ゆうべ)

 

  衣に縫いて

   君待つ我を

 

      万葉集 巻十 「七夕」「織女(たなばた)」=同意語

(以前あなたのために織っておいた織物を、今夜は縫い上げ あなたが来られるのを私は待っています)

 

 

万葉集は奈良時代に4500首編纂されたもので、七夕の歌は132首収めてありました。

 七夕の歌ですから、そのほとんどは、男女の恋の物語をイメージして詠まれています。百人一首でも100首のうち43首は恋の歌ですから、遥か昔から恋愛は、常にひとの心を熱く燃え上がらせるものですね。

スタンダールの恋愛論の結晶作用のように想いは募っていき、シェークスピア、近松の曽根崎心中などのように、恋愛は障壁が大きければ大きいほど更に激しく燃え上がっていくものです。

 七夕は年に一度、七月七日の夜だけしか逢うことの許されない究極の遠距離恋愛。

それはそれは燃え上がることでしょう

 

万葉集の七夕のうたを数点選んでみました。

 

 月日えらひ

  逢ひてしあれば

   別れまく

 

 惜しかる君は

  明日(あす)さへもがも

 

 ※「月日えらひ」七月七日という日を選んで。

 ※「明日さへもがも」〈さへ〉添加。〈もがも〉願望。

 一年ぶりにお逢いしたのですもの、お別れするのが惜しゅうございます。明日の宵もまたお逢いできればいいのに。

 

 

 天の原

  振り放け見れば

   天の川

  霧立ちわたる

   君は来ぬらし

 

 ※「天の原」空の広大な様子。

 大きな空をふり仰ぎ天の川を眺めれば霧が湧いて広がっている あなたが来るに違いない

 

 天の川

  瀬ごとに幣(ぬさ)

   奉(たてまつ)る

 

  心は君を

   幸(さき)く来(き)ませと

 ※「幣」神に祈るときに捧げるもの。

 

 天の川の川の瀬の瀬ごとに幣をさし上げて祈る心はあの人が無事おいでになるように

 

 

 天の川

  波は立つとも

   我が舟は

 

 いざ漕ぎ出でむ

  夜のふけぬ間に

 

 天の川にどのように 波が立ってもかまわない さあ漕ぎ出そう夜ふけになる前に

 

 

 ただ今夜(こよい)

  逢ひたる児らに

   言問(ことど)ひも

  いまだせずして

   さ夜そ明けにける

 ※「児ら」女性を親しんで呼ぶ語。

 たった一晩だけ逢えた妻をあまりにも愛しすぎて、愛の言葉をかけるひまもなく夜が明けてしまった

 天の川

  白波高し

   我(あ)が恋ふる

 

  君が舟出は

   今しすらしも

 

 天の川に白波が高い 私の恋しい君がたった今、舟出したらしい

 

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牽牛も船出しました

これからさびしく恋しい月日がはじまります

 せつなき恋をするゆゑに

  月かげさむく身にぞ沁む

 

 もののあはれを知るゆゑに

  水のひかりぞなげかるる

 

 身をうたかたとおもふとも

  うたかたならじわが思ひ

 

 げにいやしかるわれながら

  うれひは清し、君ゆゑに

 

   (佐藤春夫 水辺月夜の歌)