草喰(そうじき) なかひがしの店主・中東久雄氏は、京都の花脊(はなせ)にある老舗料理旅館「摘草料理・美山荘」の次男の方。
店主・中東久雄氏の一日は、使用する食材を求め、野山や畑へ入ることから始まるという。自ら採集した食材を使い、四季折々の自然の息吹を一皿に託すという。美山荘の「摘草」に対してこちらは「草喰」どちらも「摘み草」を大切にされる。
野趣に富み、季節感あふれる山野草や川魚を用い、おくどさんで炊きあげたご飯とともに供する「草喰料理」は、アラン・デュカスを初め、さまざまな方面から絶賛され、日本で一番予約が取れないというお店。
京都に行く予定の度に何年も前から何度も予約したが取れず、ようやく2022/12/25 クリスマスのお昼に訪問。
お昼の料理は8800円と11000円のおまかせコースのみ。今回は11000円をお願いしました。 (料理を最後までじっくりと感じて食べたいので、いつもの如く、料理ごとの量を少なめにと一言加え。)
開始時間が決まっていて、12時。カウンター12席が一斉に始まる。
銀閣寺から徒歩数分。
12時10分前到着 まだ暖簾は出ていない 5分前 玄関に打水され ようやく暖簾。
お店に入るとまず目立つのが紅殻(べんがら) (注1)のかわいいおくどさん。(「おくどさん」とは「かまど」のことで、台所で下から火を焚いてお米や料理を煮炊きする設備。京都以外の関西圏では「へっつい」と呼ぶこともあります。)
これだけで、この店は美味しいだろうという事を予感させてしまう。
(名古屋でも一ヶ所紅殻のおくどさんをわざわざ作った日本料理屋がありますが、そこのご飯もすこぶる美味しい。というより、ここまでこだわる店だから全て美味しいのだが。)
案内されたのは、一階カウンターだった 良かった。というか、このお店はカウンターでなければ楽しさ半減である。
さて、
客全員が揃うと、ご主人のご挨拶。
一品ずつお料理が提供され、ご主人がそれぞれの客に説明をしてくださいます。
料理はおまかせなので、話される内容をきちんと聞こうとするが、ここからご主人の駄洒落が始まる‥‥。
料理それぞれに (もてなしの心?で) 駄洒落を入れて話される…
微笑みや
笑いもありて
苦笑い
席にある丸盆は美山荘とよく似た根來塗。
湯呑みが面白い、横から見ると二枚重ねの様。網代波柄と花柄の切替染付碗
● 1品目。先付け八寸。 蓋代わりにヒトデカエデが乗っています。
「濡れ落ち葉 人手楓の人手なし」
侘しい男のことをユーモアを持って話された。
葉を外すと季節感を感じさせる料理が顔を見せます。
小さな紅椀に玩具箱の様に
かぼちゃ 柚の釜に小豆、柿、おろし、
鰹の腹ご
黒豆の炒り
名残のクリを茶梅(山茶花)仕立て
氷餅を冬景色に。
冬至の無病息災として小さな柚子釜の中に南瓜、赤かぶをすり下ろして小豆、三つ葉が乗っています。
初冠雪をイメージしたものとして、氷餅をまぶしてあるブロッコリー、カリフラワーを炒めた物。 ケシの実のついた戻り鰹のハラモ。
リンゴのスライスでクリスマスカラーとして、鹿のしょうゆ漬けの燻製を挟んだもの。 お正月用の黒豆を鞘ごと1時間ほど乾煎りしたもの。
銀杏の入った栗きんとんにクワイのせんべいを差し込みサザンカの形に。(写真では崩れていますが。)
初っ端から宝箱のように沢山の食材が入っており、わくわくします。
一つ一つお箸でつまんで味わっていくのが楽しい。
飲み物を客全員にそれぞれ順番に尋ねられ
私は、「合う日本酒を」 というと英君を勧められた。
静岡県清水の酒だ 結構いい酒を醸す醸造元。
英君は、食中酒として飲み飽きしない酒をモットーにしていて静岡酵母で醸している。
サラッと美味しい。
余分な甘味をつけないお料理に、やや甘口の英君がよく合う
● 2品目はお凌ぎ。
むかごご飯
猪の燻製
袴(茶托)に乗せた面取りの蓋付き碗
袴のもみじの枯れ具合が12月を思わせて良い味を出している。
碗の奥に少しだけ。 中にはむかご、イノシシを燻製にしたもの、乾燥した大根の葉などが入っています。
小粒のむかごだけ選んで入っている
ムカゴなんて大きさがバラバラでサイズを揃えようなんて結構大変なんだよな。こういう拘り、好きです。
新米のもち米。
美味しい
むかごが美味しい。
甘いむかごに猪の旨みが絡まり 旨い。
舌はもっと食べたいのですが、先が長いのでこれ位少しずつが丁度良い。
● 3品目は椀物。
淀川のひきぶねという名の白味噌椀。
椀の蓋 表は摘みの月輪の変化と笠をもち蓑を着て、内側は淀を行く芝船が描かれている。中々良いね。
具は日野菜を刻んだもの、天然のなめ茸。 ほんのり甘味を感じるような、優しい味。
白味噌には酒粕を少々感じる
白味噌に栃餅はいい組み合わせ。
甘味に栃餅の苦味が程よいね
● 4品目は焼き物。
朴葉に
新巻
紫芋の落ち葉
器にはカワセミが描かれています。
●煮えばな
煮えばなとは、お米が炊かれてご飯に変わる瞬間の水分をたっぷり含んだお米のことで、瑞々しくて甘く、アルデンテを感じる食感。
昔から京都の日本料理店でたまに出されることがあり、これこそがごちそうと思わせる味わいのご飯だとも言われます。
何度も食べていますが、個人的には表面が水っぽくて微かにおかゆの様に柔らかく中はほんの少し固めで新鮮でいいのだが、蒸らす直前なので甘みはまだ弱く、表面は少しのり状で中はアルデンテ。
美味しいのですが、きちっと釜で蒸した出来立てのフワッとしたご飯には到底旨味では太刀打ちできません。
煮えばなは、遊び心で新鮮味と感触を楽しむ料理だと思います。
美味しいという割には、どの料理屋さんでも一口位しか出されません。 だから一口しか出さず、お米の料理なのに全国にも広がらないのではないでしょうか。
とはいえ、料理の間の口直しには丁度良く、美味しくいただけます。
●お造り
鯉 辛味大根 自然薯 岩魚の卵 野蒜 すいば 鯉の皮 恋の鱗唐揚げ
自然薯がすごく粘り辛味大根と煮切り醤油がうまく合う
3か月間清らかな水の中で泳いだ鯉に、季節の野菜。
泥臭みのない美味しい鯉でしたが、先月美山荘で食べた鯉の方が美味しかった。
自然薯、辛味大根、ナズナ、まだ10日しか経っていない二十日大根、イワナの子、スイバ、ワサビ菜など全て絡めていただきます。
写真右側の小さな蛸壺には醤油が入っており、これをさっとかけて混ぜます。
●炊き合わせ
大根 金時人参 里芋 紅葉 牛蒡 柚味噌で
こちらは野菜のみ ベジタブルボックスですね。 聖護院大根、堀川牛蒡、金時人参、里芋、麩のモミジなど。 京野菜が入っているのが嬉しい。 爽やかな柚子味噌でいただきました。
野菜の旨みを感じる素直なおいしさです。
子供の頃よく食べた感じの味。
スーパーなどで売っている農薬化学肥料栽培による味の薄い野菜ではなく、
まともな土で育った野菜の味は、子供の頃の野菜の味とも共通しておいしく、綺麗な味。
里芋は崩して整形して焼いたもの
これはいいね。柔らかさと焦げがいい感じ
残った汁を飲む様に 小碗が出された
お汁も美味しい
●福島の自然で 放牧で草だけを食べてきた牛肉
選んだ野生牛は、本当に野趣溢れる味わい。 普段食べているような家畜の牛肉の味とは全く異なりました! ソースはルッコラとキクイモ。
牛は常に歩き回っているので体脂肪率10%未満なので肉にチーズを振ってあるそうです。
余分な脂なくてけっこういい感じ
お煎茶が出された。
いい味の煎茶
曲げ木の袴がいい形。
飲み物を聞かれたので、冷酒をお願いした。
●おひたし
しゃくし菜、蕪、湯葉の煮物。 やさしい味わい。
杓子菜は関西の冬の定番 広島菜ともいう
産卵した鮭を節にした鮭節の出汁
美味しいお浸し
こういうなんでもないよいな食が いいんだな。
ご馳走とは言わない ほんとうのごちそう。
●三品
左の白いのは豆腐 ほうれんそう
自分で混ぜて白和えにして食べる
真ん中はおから
右は漬物 大根の古漬け しば漬け 昆布
もっと沢山食べたかったのですが、この辺りでお腹が膨れてしまい、ご飯は少なめでお願いしました。
●風車のご飯
風車に見えるお椀 風車ならセルバンテスのドン・キホーテだろうと思っていたらあ案の定 ご主人がドン・キホーテを喋り出す。
●メインディッシュ
目刺
鰯雲に乗った空飛ぶ目刺
鰯雲のお皿に鰯が泳ぐように
目刺をメインにすえるのは、
日本人としてご飯を最高においしく食べていただきたいとの思いですね。
子供の頃、わざわざ七輪に墨を入れて焼いた目刺を熱々ご飯で食べたことを思い出します。
おくどはん(竈)で土鍋で炊いた炊き立てのご飯はとてつもなく美味しい。
だからこそ、目刺しと漬物を添えメインディッシュすると言うスタイルが生まれたのでしょう。
日本人として最高の贅沢かもしれません。
鰯はパリの塩 山椒オイル 山椒オイルがピリッと爽やかな刺激で美味しい
美味しい目刺
山椒オイルがよく合う
甘いご飯におしんこも
もうお腹いっぱい 次は半分以下の量にしていただきました。
●ニューヨークの夕暮れという名の お茶漬け
どう欲目に見てもニューヨークには見えないが
梅が太陽、葉がセントラルパーク、大根おろしが摩天楼、湯がハドソン川らしい
キラキラ輝くご飯はニューヨークの灯りらしいが、
大根の鬼下ろしとご飯の茶漬け
●デザート
マルメロと干し柿の上に人参の葉のシャーベット。
モミの木に見立てて冬苺と共にクリスマスカラー。
料理一つづつみると特別なものではない、
しかし、そこには京のその季節の素材の良さをきちんと入れて
丁寧に感じさせながらいただける
摘み草のその味を楽しめる美味しい料理でした。
これこそ最高の日本料理です
ご馳走様でした。
次回は春の夜にお邪魔して 春野菜でまたご主人の駄洒落と共にいただきましょう。
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懐石料理は客の好みや年令にあわせて調理を組み、一歩ひいて調理に徹し、お客様をその日の主役として料理を出すものですが、
こちらは、懐石よりももっと庶民的。
主役は客か料理のどちらかであるなどと考えるより、おいしく楽しくいただく場所。 もちろんご主人はテレビや雑誌などで拝見している通り、真摯で、たいへん謙虚な方でいらっしゃるのですが、京野菜や季節ごとの料理など美味しい料理に、駄洒落を加えて更に客を楽しませようと頑張っておられるのも愛嬌ですね。
懐石料理店をされていたなら、更に深い感銘を与えていただける素晴らしいお店になっていたでしょうが、しかしそれではこの暖かい雰囲気も客との触れ合いの形も違ってしまいます。 なかひがし流の温かな肩の張らない感じだからこそ、つみ草の料理も生きてくるのだと思います。
つみ草は 野にある優しさで頂いてこそですね。
稚拙過ぎる私ですが、野山の食を自ら求め供する者として沢山学ばせていただきました。
ありがとうございました。
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なかひがし
京都府京都市左京区浄土寺石橋町32-3
075-752-3500
(注1)
(紅殻・弁柄(べんがら)とは、酸化鉄のことで日本でも約10000年前、縄文時代からすこしづ使われ銅の採掘に合わせて鉱山で産出し、古墳時代平安時代と生産拡大していました。(インドのベンガル地方で大量にとれたのでベンガラと呼ばれる様になったそうです。)
耐熱性、耐水性、耐光性・耐酸性、耐アルカリ性のいずれにも優れており、安価なうえ無毒で人体にも安全なため、紅化粧用や九谷(くたに)焼・伊万里(いまり)焼や輪島(わじま)塗等、磁器・漆器等の顔料や東大の赤門や社寺などの建築・船舶の防腐塗料として重用され、日本を代表する工芸品を鮮やかに彩り、日本のイメージカラーである「ジャパンレッド」としても有名です。




























