んの「おいち不思議がたり」を読む。
この世のものではないものが見える、
おいちという十六歳の少女の物語である。
医師の家に生まれ、自分も誰かを救いたい、医師になりたいと願う。
特殊な力を通して、身の回りで起きる不可思議な、
そして悲しい出来事、謎を、岡っ引きなど、周囲の人々の助けを借りて、
解き明かしていく。
幾つもの引き出しを持っている作家さんだ。
同じ時代小説の、「弥勒シリーズ」とは、雰囲気も、感じる重さも、
まったく異なる。
個人的には、「弥勒シリーズ」のほうが好みなのだが、
あの、まとわりつくような重さ、暗さを体験すると、
たまぁに、この「不思議がたり」に戻ってきたくなる。
時代物で、同じような力を持つ少女の物語としては、
真っ先に、宮部みゆきさんの「霊験お初」を思い出す。
悲しくて、怖ろしい、見たくないものを見てしまう、こんな力を、
勇気に代えて、果敢に挑んでいくのがお初。
もちろん、受け入れるまでさまざまな葛藤があっただろうが。
おいちは、その力を、まだ、納得できていない。
畏れながら、怖がりながら、後退しながら、
それでも、前へ進んでいこうとする。
二人に共通するのは、びっくりするような勇気だ。
体の奥底で、この勇気が光を発している、
だからこそ、応援したくなってくる。