のみが知る」を読む。
時代は、明治にはいったばかりの頃。
絵にまつわる、不思議ばなしだ。
主人公は、大きな料理屋の一人娘、真阿。
十二のときに、胸を病んでいるといわれ、
ひきこもりのような生活を送って来た。
実は、幼いころ、両親を殺され、
叔母に引き取られていた。
そんな真阿の前に、居候が一人、
絵師の火狂が現れる。
彼の描く絵は、見る者をぞっとさせるのだが、
すきものの評判を得ている。
不思議な男である。
人には見えぬものが見えるらしい。
そんな火狂に興味を覚える真阿。
彼と交流を続けるうち、彼女自身も、不可思議な夢を見るようになる…。
それほど、ぞっとする話ではなく、人という脆さや、
弱さ、切なさが迫ってくるような。
辛い過去を持つからか、
真阿の、少女らしからぬ、起伏の少ない、淡々とした感情が、
物語に透明感を与えている。
火狂が魅力的である。