奥山景布子さんの「稽古長屋 音わざ吹き寄せ」を読む。

 

 

 

何とも、色や艶のある作品だ。

だが、文章の流れは静かで、余韻を残す。

 

三光新道に稽古屋の看板をあげた音四郎と

父親の違う妹、お久、そして大女のお光。

この三人の苦悩や想いが、江戸情緒と共に描かれる。

 

音四郎は、女形の役者として将来を期待されていたが、

ある事件で足に大けがを負い、役者を辞めざるを得なくなった。

ただ、その事件について、音四郎が詳しく語ることはなかった。

様々な想いを飲み込んで、長唄の師匠として生きること、

だが…。

 

大きな体のせいで、肩身の狭い思いをするお光の、

苦い恋心や、弟子の稽古話、隣人の先生の過去など、

音四郎の過去が明かされるまで、一つひとつの噺が、

淡々と、描かれていく。

 

淡々ではあるが、いつしか心を揺さぶられている、

そんな雰囲気のある作品である。