2016年、アメリカの大統領が暴言連発のトランプに。メディアは盛んにトランプのイカれっぷりばかり報じるが、それだけを見ていては真実は分からない。本書はトランプ大統領誕生の背景と左翼リベラルにやられっぱなしの、でも草の根保守もがんばってるアメリカの状況について、普通に生きていると知ることのできない内容で書かれている。
そういえば、アメリカの不法移民の数が1100万人って多すぎないかと以前思ったのを覚えている。その謎を解くカギが「サンクチュアリ・シティ」という聞きなれない言葉だ。
サンクチュアリ・シティに不法移民が入り込んでも、連邦法が適用されず、地元の当局は黙認してそのまま違法滞在ができる。そればかりか、運転免許証も与えられ、下手すれば選挙に投票もしてる可能性があるとか。いくら移民の国とはいえ不法な移民を受け入れ、その人たちに社会保障まで受けさせるのは法治国家ではない。
アメリカのリベラルはそれが正しいと思ってて、主要なメディアはほぼ全てリベラル勢力だから全然報じない。でも、それをおかしいと思って人も結構な数がいるわけで、だからアメリカでもメディアは全然信頼されていない。
日本でも朝日や毎日新聞あたりがアベ下ろし的な報道をしまくってるが、そんなメディアばかりから情報を得てる我が母でさえ「安倍さんのおかげで景気良くなってるやん」と冷徹なジャッジをして、報道に流されない。でもアメリカからの報道はそのまま受け取りがちで、それは間違ってるということを本書は教えてくれる。
また、アメリカの政治思想の対立についても知らないとが多かった。リベラルと保守だけかと思ったら、ライノーとネオコンというのもいる。
ライノーはリベラル的なニセ保守、ネオコンは元々トロツキストのヤベーやつ。今までの印象ではアメリカの保守がネオコンなのかなとかイラク戦争のイメージで思っていた。ライノーとネオコンに苦労する共和党内の保守よ、がんばれ。
個人的に勉強不足かもしれないが違和感があったのは、アメリカの中産階級の没落、格差問題についてだ。本書は原因をリベラル勢力の政策のせいとさらっと書いているが、これは経済学的な部分が大きいのでは。
アメリカ(日本にも当てはまるが)で格差が広がる理由は以下の通り。
(1)グローバル化で比較優位が効いて、高技能の人の給料が上がる一方、低所得者の給料が下がる(クルーグマンの良い経済学 悪い経済学とか)
(2)イノベーションでホワイトカラーな仕事がコンピュータに代替されて中間層の仕事が減る。
(3)シリコンバレーよろしく、イノベーションを起こす都市にドカっと人材や富が集中する一方、産業の転換に失敗し衰退する都市という構図(エンリコ・モレッティの年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学とか)
ただ、栄えてる都市とトランプが支持されたラストベルトの差はあまりに激しすぎる。何故もっとあの辺に重点的に再分配政策などしないのだろうといつも思う。
もし、民主党支持が少ない地域で白人が多いという理由とかで再分配をわざとしてないのであれば、確かに筆者の言う通りかもしれない。リベラルは弱者に優しいはずなのに、ラストベルトあたりにやや冷たい気がしなくもない。
それでも、前述の州政府の権限が強くて政府が介入できないのかもしれないし、共和党が強い都市に巣くうティ-パーティーが緊縮財政をするせいかもしれないし、実際はどうなんだろうか。
最終章では、日本はサヨク・リベラルにやられっぱなしで経済・安全保障の課題が山積みだが、どう良くしていくかについて、サヨク・リベラルの工作を素直にうまいと認めたうえで取り入れよう。経済を良くして彼らに権力を取られないようにしようと提言する。
最近の森友、加計学園しかり何だかんだで日本サヨクによるメディアの操り方はスゴい。一方、保守(や普通の人)は「マスメディアは腐ってる!」で終わり。そんなやり方ではマスメディア側は反感を持つだけで何も変わらない。江崎さんが言うように組織化する、優し~くレクをするなどして操るぐらいの気概が必要だ。
最後に、自らが必死になって賢く強くなろうと言う。よく考えたら、平和にとって害の多い人たちもそれを正義と信じて努力してるわけで、平和を望む人々が政府が何とかするだろうとあぐらをかいて怠惰に過ごせば、豊かで平和な生活が奪われてしまうかもしれない。「一身独立して一国独立す」の諭吉先生の言葉を胸に、毎日少しずつ賢く強くなるように勉強していこうと思った次第だ。
ところで、こないだのチャンネルくららの江崎さんの動画では、防衛費のGDP2%での予算化に向けて良い感じになってるらしい。
それは良い事だが、2%でも本当は足りない現状についても語っている。今後、どうなる事やら。
江崎さんは金融政策について理解があり(ここですでに稀有)、それでいて軍事以外でもリアリズムな視点で思考する稀有な評論家だと思う。こういう人が増えてほしい。