<スタッフ紹介>
橋本 裕子:きんつう相談室代表。
スタッフK:各文書、論文等の編集スタッフ。線維筋痛症患者。
山岸 史:イラスト、デザイン、SNS管理。
2年間のエピソード ~啓発チラシ作成~
橋本:
啓発チラシができたときには本当に全力で医療機関に送りましたね。
20年前にもそれをやっているんですよ。
スタッフK:
NPOのときですね。
橋本:
あのときは、数万枚というチラシを作って送りましたね。
私はやっぱり紙の人間だし、紙をもらったら、きっともらった人もリアクションしたくなるだろうなって思っているので、「きんつう相談室」のこの啓発チラシをいかにたくさんいろんな場所に配るかというのは実に大事だって考えていましたね。
病院の医師が病院に貼り出してくれていたり、患者さんに手渡してくれていたり。すごく嬉しかったです。「患者には医療だけでなく、仲間と話せる場が必要だ」と理解してくださっている医師なんだなと思います。
医師からもらったとか病院に貼ってあったというのが何例かあって、すごくありがたかったですね。
あと、何人か奇跡的な再会っていうのがあって。
一人はNPOの時に、私と何回か電話で話をしたことがあった患者さんなんですよ。
しばらく途切れていて、最近電話をしたら、橋本は辞めましたって言われたと。何とかして橋本に電話したいけど、行き先が分からなくて絶望してたんですって。
半年経ったときにある病院に行ったら、啓発チラシが貼ってあって、電話番号、これもしかして橋本じゃないかって。
それで電話をしてくれて。二人とも感激しました。
スタッフK:
感動の再会ですね!
患者さんが絶望してしまうとか、そういうことが無いように、受け入れられる体制を強化したいと思うんですよね。
橋本:
はい、その通りだと思うんですね。 NPOを辞めて新しく立ち上げる時に私が一番急いだのは、受け皿を作ること、その次にはそれをどうやって広く広報していくか。それをメインにやらなければいけないと思っていたので、その準備期間の10か月と立ち上げてからの1年はやっぱり、急がなければいけないなっていう気持ちでやってた気がしますね。
スタッフK:
なかなか1年って短いですよね。
橋本:
短かかったですね。とにかく患者さんを路頭に迷わせちゃいけないっていう気持ちがすごくあったので、受け皿を早く、と。
スタッフK:
啓発チラシのデザインは、どういう経由で史さんに話がいったんですか?
山岸:
最初に、私の友人のMさん(以下、Mさん)が線維筋痛症を啓発しなきゃいけないと一人で思い立って、私に「チラシを作ろうと思ってる」と相談してくれたんですね。で、二人で話を進めている間に、Mさんが橋本さんの活動を知って連絡を取って。それで橋本さんがMさんのしようとしていることに共感して、チラシに連絡先としてきんつう相談室の情報を入れようか、という話になったと記憶してます。
橋本:
Mさんは本当に、一人でやろうとしていたのですよね。
でも、連絡先の電話番号や住所はどうするのかとか、やっぱり個人だと大変なところがあるよっていう話もして、経済的な資金調達も課題になるし、いろいろ考えました。
配布先も、自分の住んでいる県内だけでっていうのではもったいないから、もうちょっと広くするっていう手もあるけど…、でもそうするとまたさらに資金の問題もあるし、事務的にどうやって広げたらいいかっていうのもあるから。
少なくとも電話番号は私のところで代行してもいいよ、っていうのが一番最初のやりとりだったんですよね。
2年間のエピソード ~史さんが加わったこと~
スタッフK:
史さんが業務に加わってくれたこと。これは相談室にとって大きなターニングポイントの一つになったかなと思います。
確か、「大変なようだったら手伝いますよ」って言ってもらったような。
山岸:
そうだったと思います。ブログの調整とSNSでの発信ならできるかなと。
ブログはせっかく書いてるのだから、体裁を整えてたくさんの人に見てもらい易くした方が良い、そうじゃないともったいない。
そんなに大変な作業じゃないと思ったので、僭越ながら申し出た記憶があります(笑)
スタッフK:
すごくありがたかったです、今もありがたいんですけど。
私はブログとかホームページを試行錯誤しながら作っていて、もうこれどうしたらいいんだろうって時にポンッと正解をくれたような感じで。
明らかに、プロの作り方とか感性って違うんだなって感じました。ただプロが入ってくれたから良かったということではなく、違う視点が入ったというのが大きく変わったポイントかなって思ってます。
橋本:
違った視点というのがものすごく大事で、だいたい自分一人で発信するときって、自分の視点でしかなくて、どんなに気をつけて受け取り手の視点を考慮したとしても、やっぱりそれは自分が考えている受け取り手というイメージでしかないわけですよね。
だから、三人でやってることそのものに意味があると思うんですよ。
で、なおかつ最初に言ったように、ちょっと違うタイプの違う三人だから。違った考え方も出来るんだなと。だから常に発見があるというのかなあ。そんな感じですよね。
スタッフK:
橋本さんも私も病名は同じでもやっぱり症状は違うところも多いし、経験も全く違うし、史さんもそれで言ったら職業全く違いますものね。
お互い考えが違う中で集まって一つのものを作っていくっていう、感性の違う人たちが集まると、こういうものができるんだっていう面白さがありますよね。
橋本:
特にね、私は自分が考えているときに、色とか形が全く存在しないんですよ。私の世界って白か黒かぐらいしかなくて。
逆に色がたくさんあるとなんかちょっと慣れないっていうくらいの感じなんですよ。
そこに挿絵や写真やイラストが入ってると、すごい!と思うんですよね。考えていたことを形や色で表すということが。
今まで自分でそういうふうに考えたこともなかった、っていう驚きがあるんです。
だから違う感性で見てるっていうのは実に面白いと思うのね。
そもそも私が偏っている人間だからこそ、三人でミックスすると色んな人に分かりやすくなるんだろうなっていうのはすごく思いますね。
スタッフK:
お互いがお互いを補い合ってるみたいな感じがしますよね。
橋本:
相乗効果というか、プラスアルファが史さんのアイデアというか。
そこに注目するんだ!というような観点ですよね。言われたらそうだなって。自分では気付けなかったな、っていうそういう面白さありますよね。
山岸:
本当に伝えなきゃいけないことを持ってるのは橋本さんとKさんで、私は飾り付けをする係なので、そういう意味で気は楽だったりしますね、そのことだけ考えてればいいので、そこで全力を出している感じです。
やっぱり根っこのところを作る人が一番大変だと思うので。
スタッフK:
史さんは謙虚におっしゃるんですけど、史さんが指摘してくださったところって、私達結構ギクッてするんですよね。そこ気づかなかった!みたいな。
なんかすごく大きいことを、飾り付けどころか、もう根本から気付かせてもらえることって結構大きいんですよ。
山岸:
いやー、そんなふうに思っていただいてたとは!
スタッフK:
私の経験では、今までお給料有る無しに関わらず、これだけ自分の意見をまず聞いてくれるっていう事が少なかったんですよ。みんな似たような経験をしてきてると思うんですけど。
でもきんつう相談室ではまず意見を聞いてくれて、検討してくれるんです。
山岸:
やっぱり橋本さんはカウンセラーさんらしく、「俺が俺が」っていう感じじゃなくて、まず聞いてくれる人だなと。
なので何か作るにあたっても、なんていうか、私を泳がせてくれるところがあって、そこは助かってる。
スタッフK:
すごく自由度が高いですよね、私たちのできることに。
山岸:
そうなんです。
橋本:
そう思ってもらえるのがとってもありがたいです。いや私はね、本質的には俺が俺がですよ(笑)。
ただ違うのは何かっていうと、私はいろいろ器用にできないし、だいたい世の中って私よりは、「何らかのことに関してうまくできる人」が圧倒的にいるんですよ。例えば、プレゼントをラッピングするのは私めちゃくちゃ下手なんだけど、誰かにラッピングしてもらうとすごく上手に包める。
私以外全員、私より優れていると思ってるのね、基本。なので、誰かの意見を聞いたり、その人の案を取り入れたり、手伝ってもらったりする方が絶対いいに決まってるじゃん。
私はすごく不器用。だったら人の意見は聞くよね~。
何かを作ろうとか何かをしようというのが私の目的だから、そのためにアイデアを出してくれたり、手伝ってくれたりするんだったら、大いに乗っかっちゃって、手伝ってもらおうって思ってる。
その方がうまくいくんだけどな。
スタッフK:
今思うと、私なんでこんな提案したんだろうと思うこともいくつかあるんですけど、それでも一度は拾って意見をもらえる。
ちゃんと向き合ってくれるっていうことが患者さんにも伝わるから、これだけ相談で頼ってくれる人がいるんじゃないかなって。それがカウンセリングにまた生きてるんじゃないかと思ってます。
橋本:
そうだと嬉しいです。
さっきKさんがちょっと言ってたんだけど、史さんが何か疑問を問いかけてくれると、私たちがスルーしていた気づかなかったところが結構見つかるっていう話なんですけど。
それは私もすごく感じていました。
違う人の目から、そこはどうして?と聞かれると一瞬「え~?」となって、もう1回考えるのね。
だけどそうやって何回も考えてみたり、あるいは今回、史さんにどういうふうに説明すればいいのかなとか、この病気を知らない人にはどういうふうに言えばいいのかなって、改めてまた考える。
ここの作業がね、私たちにとってものすごく役に立つんだなっていうのを勉強しています。
スタッフK:
そうですね、ある程度通じちゃうっていう部分が良いところでもあり、デメリットでもあるっていう(笑)。
山岸:
指摘ってほどのことはしてないんですけれども、何かわからないときは何でも口にして、「今の何ですか?」みたいに聞いちゃってるとこありますね。
スタッフK:
何のことですかって聞かれるっていうことがすごくありがたいんですよね。
史さんは何か意識してることってありますか?どの辺を意見として言おうとか。
山岸:
患者さんにも、線維筋痛症を患って長い人もいれば、発症や診断が下りて間もない人もいますよね。情報収集に積極的な人ばかりでなく、まだ知識の少ない人もおられる。患者さんの周囲の人も。
きんつう相談室で発行したものが後者の人達に届いたときにどう見えるのか。私自身がまだ線維筋痛症に詳しくないので、その目線で見てみるっていうのはあります。
スタッフK:
なるほど。
患者二人、患者ではない人が一人、という視点があるんですね。
山岸:
相談室でやっていることを広めたいと思ってブログやSNSを担当させてもらっているんですが、SNSの方は拡散していくことが大事ですし、分かってる人に深く狭くピンポイントに物事を伝えるっていうより、どのくらい広い人にリーチさせるかという姿勢でやっていますね。
もし私が何か指摘してるとすれば、そういう視点から来ているかもしれないです。
橋本:
そこがすごく大事なところだと思うんですね。「線維筋痛症ではない人」代表っていうのかな、史さんはそんな立場ですね。
SNSって本当にどんどん狭いところに入っていく感じが私もしていて、その仲間内だけで分かってる状態になっているのは嫌なので。
いかにして広く外側に発信していけるかというのは、やっぱり一番大きな課題だと思うんですよね。だから、史さんが言っていることはすごく大事だと思うんです。私が紙媒体を大事にするっていうのも、そういう「広く伝えたい」というところから来ているんですね。
紙媒体っていうのは例えば何万枚かをどこかで配ったとしたら、いらない人も持っていく可能性があるんですよ。
持ってってそのまま捨てられちゃうっていう確率は高いけど、でも持って帰って、そこら辺に置いておくと家族が見るとか。誰かの目に触れる確率が何倍かに高まっていくんですよね。
SNSは、見ようと思って検索してたどり着いた人だけしか見ないんだけれども、紙だったら何気なく見ちゃう人がたくさんいる。
例えば新聞紙みたいな、何かお野菜買ったときに包んでくれた紙をちらっと見ることだってあるかもしれないです。焼き芋を包んでいた新聞紙を読んで何かを知ったとか(笑)。
私は紙っていうのはそういう可能性がある気がして大好きなのね。
出来るだけたくさん、関係ないようなところにも、とにかく置いてもらえたらいいなって思ってるんです。
スタッフK:
まずは置くところからっていうことですよね。
橋本:
ひとつ嬉しい話があるのだけど。
患者さんが、道の駅に交渉して置いてもらっているところがある。
スタッフK:
その患者さんすごいですね!
山岸:
嬉しいなー。
橋本:
最初はね、私と色々話していて病院とか市役所とかに依頼に行ったの。図書館とか。
でもあまりOKが出なかった。
スタッフK:
公的なところは難しいですよね。
橋本:
なんで行政なのに受け取ってくれないんだ!!ってモヤモヤした気持ちになって。帰り際に道の駅に車止めてちょっと休憩したんだって。
そのときに、何気なくこれちょっと配ってるんですって見せたら、「うちにもそういうチラシを置くスペースがあるよ」って言われて、「置かせてもらっていいですか?」と言ったら「いいですよ~」って。
スタッフK:
へぇー感動。
なるほど、道の駅っていうのはあの「活動紹介チラシ」にも書いてありましたけど、そのエピソードは知らなかったですね。
そうだったんだ、すごいですねそんな、柔軟に受け入れてくれるってありがたいですね。
橋本:
行政に依頼に行って断られると落ち込んでしまう、傷ついちゃうから。
やっぱり道の駅って本当すごい、目から鱗だったですね。
スタッフK:
色んな人が、色んな所から来ますもんね。物産品目当てで来たりとか、休憩で来たりとか。見てくれる人の幅が広いですよね。
これはすごいエピソードですね。
(つづく)
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