『    君と僕    ~愚痴~    』


「僕は愚痴を言うのも聞くのもキライだ!」

口癖のようにいつも繰り返す僕のこのセリフに、君はいつも共感してくれない。

愚痴とは読んで字の如く、愚かで痴がましい行為。
つまり、愚痴を言う人間の心は汚れているのだ。

しかし、君は毎日のように僕に愚痴をこぼす。

それさえ無ければ君はとても優しくて、心配性なくらい人を思いやれる素晴らしい子なのに…。



これまでの人生で僕は、
決して周りに弱音を吐いたり、愚痴ったり、悩みを打ち明けたりしなかった。

そんな僕に周りの皆は言う。

「大人だね」
「立派だね」
「男だね」

…悪い気はしなかった。

でも、君だけはこう言った。

「大丈夫?」



これまでの人生で僕は、
悲しくても辛くても、表に出さず涙も見せず、すべて自分の心の中に溜め込んで我慢してきた。

そんな僕に周りの皆は言う。
「強いよね」
「偉いよね」
「凄いよね」

…悪い気はしなかった。

でも、君だけはこう言った。

「そのうち取れなくなっちゃうよ」

……??

君の言うことはたまに理解できない。




人の心配ばかりする君に、ある日僕は聞いてみた。

「君はなぜ悲しんでいる人を見ると放っておけないのかい?」

君は答えた

「だってね、知ってた?
悲しみってね、そのまま放っておくと心の染みになるんだって。
〔悲しみ〕が〔悲染み〕になっちゃうってこと。
取れなくなっちゃうんだよ!
そうなる前にちゃんと拭ってあげなきゃ。吐き出さなきゃ。
想像してみて!心に黒い染みが徐々に増えていくの…怖くない?
だから悲しみは一人で溜め込んじゃダメなんだよ。」


長年拭わず吐き出さず、放置され続けた染みだらけの真っ黒な僕の心がフッと頭に浮かんだ。
心が汚れていたのは僕のほうだ。
もう手遅れかもしれない。


「愚痴も立派な薬ですっ!」


そう言って君はまた今日も僕に愚痴をこぼし始めた。


そんな君を見て、君の心が真っ白でとても綺麗に思えた僕は騙されてるのかなぁ…。



- 2006.10.25 - 旧ブログ「タケ帳」より