『    君と僕    ~大きな差~    』


前から不思議に思っていたんだ…

それが何なのかは解らないけど
君と僕とでは昔から何か「大きな差」があって、
年上の僕がなぜかいつも年下の君を頼もしく感じていたこと。
実は心のどこかで君を羨ましいと感じていたこと。
そして君に憧れていたこと…。




僕は世間でいう典型的な世渡り上手。
打算的で要領が良く、
砂のようにサラサラと物事の障害や困難をうまくすり抜けて来た。
おかげで苦労らしい苦労というものをした覚えがない。

一方、君は竹を割ったような性格で、
よく言えば誠実、悪く言えば馬鹿正直。
持ち前の明るさと、その天真爛漫さで周りにはとても好かれていたけど、
まっすぐで素直ゆえに物事の障害や困難に正面からぶつかってしまい、
おかげで落ち込むことや涙を流すことも多かった。


僕らが出会ったのは高校生の頃。
たまたま同じ大学を目指していたことをきっかけに一緒に勉強するようになり、そこからお互いのことを色々と知っていくうちに親交を深め、いつしか付き合うようになったのが僕が高校2年の春のことだった。

その後、勉強と息抜きをうまく両立させ充実した高校生活を送った。
しかし、僕らが目指していたのは入学基準が極めて高い難関大学。
必死の勉強も虚しく結果は2人とも落第。


僕は浪人を一瞬考えはしたが、再び落第した時のリスクや再受験後での年齢差や人付き合いなど、起こりうる様々な困難を踏まえ、早々と再受験を諦め進路変更。
親の伝を頼って一般企業に就職した。

一方君は落第のショックから立ち直るまでに数日の時間を費やしたが
大きな夢を叶えるために浪人の道を決意し、1年間の浪人期間を経て再受験。
見事難関大学に合格し、さらに大学院にも進学した。


それからしばらくして僕らは一緒に住みだした。それと同時に2人で犬を飼うことにした。
名前はポチ。
この頃から僕らは結婚も考えだしていて、君と僕とポチとでの幸せで楽しい日々が続いていった。

1年後…
悲劇は突然訪れた。

ポチが死んだ。

あまりにも早すぎる死。フィラリア病だった。
ペットとはいえ、もはや家族のような存在だったポチ。


悲しみに打ちひしがれた僕は、あまりの辛さから冷たくなったポチを直視することができず1人部屋にこもり、ただ涙をこらえて元気だった頃のポチを記憶の中で思い返すことしかできなかった。

一方君は、ボロボロと涙を流しながら抱きかかえた冷たいポチをしっかりと見つめ続け、辛さを噛みしめながら最後のお別れを告げていた。
その光景は、君が必死でポチの死を受け入れようとしているように僕には映った。


さらに1年後-。

君と僕が出会ってからこれまで積み重ねてきた数々の
「思い出」と「笑顔」と「涙」が、両手で抱えきれないほど溢れかえったこの時期に僕らは晴れて結婚した。
それから子供にも恵まれて、中古だが一戸建ても購入した。


仕事の方はというと、
僕は、自分に合っていないという理由から、最初に就いた企業から何度か職を変えつつも、持ち前の世渡り術で要領良く働き何とか家庭を支えた。

一方君の方は、ずっと前からの大きな夢だった研究者になった。
出産や育児との両立が難しいという理由から
結婚や出産をためらう女性研究者も多いと言われているなか、
君はついに夢を叶えたんだね。




…!!!


………そうか、そういうことか!


こうやって君と僕のこれまでの人生をそれぞれ振り返ってみると
明確に浮かび上がってくる大きな違い…大きな差が!



我が身に降りかかる困難や障害から

「避けること」   「逃げること」

ばかり常々考えて生きてきた僕。


一方、困難や障害は

「解決するもの」   「乗り越えるもの」

だと昔から気づいていた君。




前から不思議に思っていたんだ…

それが何なのかは解らないけど
君と僕とでは昔から何か「大きな差」があって、
年上の僕がなぜかいつも年下の君を頼もしく感じていたこと。
実は心のどこかで君を羨ましいと感じていたこと。
そして君に憧れていたこと…。
  


その訳が今わかった気がしたよ。


- 2006.11.24 - 旧ブログ「タケ帳」より