『    君と僕    ~人生論~    』  



親愛なる教え子の2人へ

題名「ただそれだけで」

-恋する女の子編- 
毎日悩んで泣き明かし、流した涙の数だけ傷ついた。 
長い長い恋の旅。いつも想いはすれ違い。 
私の心はボロボロで、儚く過ぎ去った切ない日々。 
もうこの傷は癒せないと思っていた。 

でも、今あなたと結ばれた。 
ただそれだけで、これまでのすべてが報われました。 

-夢追う男の子編- 
自分が嫌になるほど失敗し、流した汗の数だけ挫折した。 
長い長い夢の旅。いつも努力が空回り。 
僕のプライドはボロボロで、せわしく過ぎ去った苦しい日々。 
もう立ち直れないと思っていた。 

でも、今夢が叶った。 
ただそれだけで、これまでのすべてが報われました。  

そう。1つの成功をおさめた後なら、 
これまでの失敗や挫折は、成功までの過程に変わる。 
諦めた時点で初めて挫折は挫折、失敗は失敗と言えるんだ。 

だから夢を諦めない、恋をやめない。 

屁理屈かもしれないけど、そんな人生を送りたい。 

おしまい
        
~竹田先生より~ 




この「ただそれだけで」というお話、これは高校生の頃に 
恋に悩んでいた君と、将来の進路で悩んでいた僕のために 
当時の担任だった竹田先生が書いてくれた人生論。

この言葉に励まされてからというもの、これまで僕は 
どんな辛いことに見舞われようとも落ち込むことはなくなった。 
なぜなら夢を追い続ける限りその辛さは過程にすぎないのだから。 

ところで同じ人生論を教わった君は今どうしてるのだろう。 
恋は実ったのだろうか。報われたのだろうか。 
君とは高校卒業以来会っていない。 


久しぶりに電話をかけてみた。 

「やぁ、久しぶり。元気かい?」 

「あら、久しぶり。どうしたの急に?」 

「いや、ちょっと竹田先生の人生論をふと思いだしちゃってね。ほら、君と僕だけに書いてくれたものだからさ」 

「えぇ、もちろん覚えてるわ。 
辛い時はいつもその言葉を思い出して乗り越えてきたんだもの」 

「そうか、君もかぁ。僕もそうなんだ!
あの言葉に何度助けられたことか」 


「…今の私はまだ過程だけどね」 


「あ・・じゃぁ、君はまだ独身なんだ…」 

「でも全然大丈夫よ!過程なんだから。成功までに必ず通る道筋ってこと」 

「そうだよね!実は僕も今…過程なんだ。 
でもこれはまだ失敗でもなければ挫折でもないんだ! 
だって僕はまだ夢を諦めてないんだもの!」 

「うん、そうだよ!私だって諦めてないわ!」 

「2人でこれからも竹田先生の言葉を胸に頑張っていこう!」 

「うん!」 


そう言って電話を切った後・・ 


あれ?なぜだろう、ふと涙が溢れ出てきた。 


そしてなんだろう。この時折襲い来る
胸を締め付ける様な焦燥感、不安感、悲壮感。 
まるで僕らが、とんでもない過ちを犯しているかのような…。 


そういえばさっきの電話中も、 
時折君が鼻をすする音が受話器から聞こえていたような…。 




竹田先生から教わった人生論。 
君と僕は忠実にこれを信じ続けること30余年。 

現在、君は独身50歳。 

現在、僕は無職50歳。 

そんな君と僕の口癖はいつもこう。 


「過程ですから」



- 2006.12.10 - 旧ブログ「タケ帳」より