オンデマンドの本 | 無駄話。

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鬱病・適応障害持ちが書く与太話です。「下劣な党派心」による「あら探し」が多いので、合わない方はご遠慮願います。

 Amazonで「萩原遼」と検索していると「ペンで闘ったサムライ・大宅賞作家 萩原遼」というオンデマンドがヒットした。ポイントで買えたので取り寄せて読んだ。

 萩原遼の本は「ソウルと平壌」以来、それなりに読んできたが「ソウルと平壌」に朝鮮労働党第6回党大会で日本共産党の訪朝団の一員として訪朝したとは書かれていても「首領」と一緒の記念写真を見たのは初めてだ。「北朝鮮に消えた友と私の物語」は凡百の4・3で南労党には触れないし西北青年団が何故「北の敵を済州島で討つ」のかが書かれていない本とは違うが、何故北朝鮮が著者を「公安の手先」と見なしたのかが本当になかなか分からなかった。当時の天理大の朝鮮語科には「現職警官に朝鮮語を教える「別科」なるものがあり」とはあるが、植民地時代に坪井豊吉のような日本人の警官が朝鮮語を学んでいた事を知ったのは、そんなに前ではない。朝鮮労働党は日本共産党と関係が冷え始めていたのもあって「朝鮮語を話す日本人は警官だ」という先入観があったのだろうか?中には宮脇淳子あたりが未だに後生大事に奉じている「満鮮史観」にしても本気で朝鮮史や文化を研究する為に朝鮮語を学んでいた日本人がいたかもしれないが、朝鮮総督府や李王職などの通訳として朝鮮語を学んでいた日本人の方が多いだろうか?「寒村自伝」を読んでいると人民戦線事件で逮捕された時の記述に内鮮係の朝鮮人特高が出て来た。この本に出て来る大阪外大で朝鮮語科の「在日朝鮮人の学校で生徒から朝鮮語をちょっと学んだていどの三十歳前後の専任講師のかれが事実上の語科主任」に「案内されて京大の言語学科の研究室に行った」事が記されているが、「専任講師」は「ユンボギの日記」を訳した塚本勲らしい。最近、朝鮮総聯幹部が書いた民戦の本で萩原遼が知らなかったという南信子というスパイに言及しているのは逮捕されて面が割れていたからだった。

 それにしても北朝鮮の検閲官は金史良が「海が見える」で記した乱数表のような暗号名の持つ意味を見落としていたようで「朝鮮と私」にあるように萩原遼が解読しようとした文書が方虎山の第6師団だと結果的に教えてしまったのだから。もし金史良が他の部隊で従軍したか解読しようとしたのが第6師団以外の部隊の文書だったら、もう少し手間取っていただろう。

 「北朝鮮に消えた友と私の物語」に出て来る韓国軍の捕虜となった金民柱の命を助けた憲兵大尉と同窓の大尉は、どこの所属だったのだろう?看守として学ぶ学校の教官なので保衛部かもしれないが社会安全部か朝鮮人民軍だろうか?

 個人的には韓国の歴史や文化に関心を持つきっかけは張赫宙の「秘苑の花」であり、「嗚呼朝鮮」と「無窮花」だ。最近知った「在日朝鮮人の内幕」で手の平を返すように「秘苑の花」の主人公兼以前から面識があった趙重九以外の情報源らしい英王李垠と民団入りでお世話になった朴烈を罵倒しているので、これでは張赫宙は言えば言うだけ嫌われるはずだと分かったが何故彼が英王李垠の半生を通して当時の日本人ならまず馴染みのない漢城の宮中や韓国の歴史を書こうとしたのか、朝鮮戦争を題材にしたのか、という気持ちには変わりがない。「無窮花」を読むには当時の韓国について知識がないと分かりにくいだろう。特にヒロインの玉姫を人民軍の李中尉が「ミス金」と韓国式に呼んだ個所。