誤訳と誤記? | 無駄話。

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鬱病・適応障害持ちが書く与太話です。「下劣な党派心」による「あら探し」が多いので、合わない方はご遠慮願います。

 「境界に生きる女たち」はグリュッケル・フォン・ハーメルンを取り上げているから買った本だ。昨日、ふと見ていて「皇女エイレーネー」とある個所が目を引いた。ここは東ローマ皇帝を指すのは「シャルルマーニュ」が出て来るから分かるが、邦訳者達と編集者は誤訳しているのが分からなかったらしい。エイレーネーがどういう人物なのかを知らなかったのかもしれないにしても、原書は英語の本だから皇女なら"Princess"で、女帝なら"Empress"と違う単語のはずだが。

 著者はグリュッケルの自伝を出した人が著者名に選んだ「グリュッケル・フォン・ハーメルン」について「間に貴族を意味する「フォン」を挟み」と書いている。日本のイディッシュの研究者が書いた本でも同じ事を書いているが、ここは英語の"of"と同じで「ハーメルンのグリュッケル」という程度の意味合いのはずだと気がついた。グリュッケルについて1章を割いている「ドイツにおけるユダヤ人の歴史」のジュースキント・フォン・トリムベルクを紹介する時に「「フォン」というのは出身地の表示である」のと同じだが、ドイツ語の本でもこう書くのは「フォン」が付く人名は貴族を指すと見做されるからだろうか。オーストリアでは共和制移行後、爵位だけでなく「フォン」を付けて名乗る事は禁止されているというし。「読むことの歴史」では単に「グリュッケル」なのは、それで間違っていないからだろう。

 「読むことの歴史」で中世ユダヤ教徒について書かれた章を訳した人と担当編集者はユダヤ教について相当、知識がない人らしく、マソラの注釈に「七-十世紀に書かれたヘブライ語の旧約聖書注釈本」などと書いている。ヘブライ語の聖書の写本に付ける大マソラと小マソラなどはあるけれど、そんなものあるの?

 この本の邦訳者の中に反天皇制論者のフェミニストがいたのは気がつかなかった。著者がユダヤ人でマルクス主義の洗礼を受けていて、マッカーシズムの際には追放された経歴なので邦訳が出たのだろうか?アメリカのユダヤ人で共産主義者になったが、ソ連とコミンテルンのスターリン独裁への変質とトロツキーへの共感でトロツキストになる人がいたが、トロツキーからも離れてしまう人もいるから、アメリカのユダヤ人と共産主義について調べると色々と見えるものがありそうだ。