「とろみ」と薬効 | 幸せの「いのちの光」輝やかせ☆彡

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日経メディカル2024 03 13号より転載しています。
とろみが薬効を低下させる可能性:日経メディカル (nikkeibp.co.jp)

 

 

 

嚥性肺炎や嚥下障害のある患者さんにとろみを使う際に気を付けたいのは、薬効に影響を及ぼしてしまうかもしれない点です(関連記事:反射的に「とろみ水」を使っていませんか?、継続可能な服薬法を考えるのも主治医の役割)。とろみ水が錠剤などを覆ってしまい、薬の溶解に時間を要する、あるいはときに錠剤がそのままの形で大腸にあるのがCTで見られたり、便として排泄されたりする様子も報告されています。

薬効への影響を左右する因子

 この度、とろみが内服薬に及ぼす影響について調べたシステマティックレビューの論文が公開されたので、最新の知見を改めて紹介します( Atkin J, Devaney C, Yoshimatsu Y. et al. Modified medication use in dysphagia: the effect of thickener on drug bioavailability—a systematic review. Eur Geriatr Med (2024).)。なおこの研究は、私が現在所属している英国の市中病院の薬剤師と若手医師が取り組んだ成果です。

 今回見つかった論文の多くは、体内ではなく実験環境下(in vitro)で行われた研究です。そこから見えてきた、薬効への影響を左右する因子は次の通りです。

・とろみの主成分(キサンタンガム、デンプンなど)
・とろみの濃度(濃いほうが薬効に影響が出やすいという報告がある)
・薬の種類(同じ成分でもメーカーにより反応が異なる)
・薬がとろみ水に接触している時間(浸漬時間が長いほど溶解に時間がかかるという報告がある)
・とろみをつけている液体の種類やpH(報告内容にばらつきがある)
・薬の種類(薬効に影響を受けやすい種類は明確ではない)

 

 

 

 とろみと薬の関係が初めて指摘されるようになってから、研究や報告数も増えてきたとはいえ、各種薬剤の体内での薬効への影響を十分に追究したものはいまだに少数です。また、高齢者や肺炎に罹患した患者さんにおける研究は、調べた限りではほとんど見受けられません。このテーマに関してはまだデータの蓄積が待たれるところです。

 診療場面においては、とろみ水での服薬を習慣的に行っているからといって、それが最適とは限らないかもしれないことは常に念頭に置いておく必要があります。また、とろみは必要な患者さんに対して、必要なとき、必要最低限の濃度で使うこと。そして、特にとろみを使い始めた(あるいは中止した)患者さんでは薬効にも注意してモニタリングを行うこと。薬効が十分でないときに、ただ薬を追加・増量する前に、とろみの有無や種類に変更がなかったか、ということも振り返ること。こうした基本姿勢を忘れずに丁寧な診療を心掛けられればと思っています。

 特に薬は大事な治療であり、また処方されてから患者さんが服薬するまでに多数の職種が関わります。医師が処方し、薬剤師がそれを確認して調剤し、患者さんの服薬に際して看護師が介助することもあります。どの段階で接する職種においても、患者さんがどのように服薬するのかを意識し、患者さんの機能や服薬方法に適した処方であるかを考えることを習慣づける必要があります。


 今回は薬効に着目してお伝えしましたが、とろみには、薬効に及ぼす影響以外にも、気を付けなければならないことが多々あります。例えば咽頭残留が増加すること(そして残留したものを後々に誤嚥するリスクを伴うこと)、口腔内衛生状態の悪化、のど越しや味の変化によるQOLの低下、飲水量の低下に伴う脱水、満腹感による食事摂取量の低下など、どれも患者さんの体調や生活への影響が無視できないことばかりです。

 誤嚥性肺炎や嚥下障害を疑った際に「安全のため」「とりあえず」そして「惰性で」とろみを使ってしまうのではなく、必要性や代替案を含めて柔軟に考えられるように、どの職種も心掛けられるといいですね。

 

 

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以上   転載 おわり