2018 FIFAワールドカップロシア大会が始まりました。皆さん寝不足の日々が続いているのではないでしょうか。
優勝候補のブラジル、ドイツが苦戦する中で日本は見事に南米の強豪コロンビアを2-1と下し、日本代表フィーバーをもたらしてくれました。本当に嬉しく思います。
今さらですが、私は実は、日本が勝っても不思議はないと考えていました。国民の期待の低さが代表選手達へ伝われば伝わるほど、余計なプレッシャーがかからないため、活躍しや すいだろうと考えたからです。
環境とメンタルの状況で勝率は上がる
ハリルジャパン解任から西野ジャパンへの変更の曖昧さや、23人の選出の平均年齢の高さなど、不安一色の報道により国民の期待度は低下するばかりでした。
期待がなければ、プレッシャーも軽くなります。その環境だと、今の日本の選手は自然とプレーだけに集中し、力を発揮しやすくなります。
また、4年前のワールドカップ出場選手が半数以上選出されたこと、前回大会でコロンビアに負けたことなどを踏まえると、チームとしては円熟したのではないかと分析していました。これがブラジルやアルゼンチンだったらビックネームに弱い日本なのでわかりませんが。今回は運も味方したとはいえ勝利する可能性が高かったように感じます。
どんな状況でも主張できること、耳を傾けられること
日本では、子供のころから「答え」、もっと言えば「正解」を求められがちです。正解を言わなければ恥ずかしいということもありますし、一方、答えを言わなければ怒られるという、むずかしい状況にもよく陥ります。
また、議論の中で違う意見を言うと、「けんかを売っているのではないか」「その人のことを嫌いなのではないか」とあらぬ方向に発展してしまいがちです。違う意見を言うことへのハードルが非常に高い国なのではないでしょうか。
そのため、一般に、主張をすることがむずかしく、主張する練習もしづらい国であり、文化です。
ところが、サッカーには正解はなく、特にゲームの中ではどんどん正解が変化していきます。
したがって、日本のサッカーが強くなるには、主張する力が重要ですし、議論を重ねるためにも人の話に耳を傾け、お互いを尊重する中で自分たちが信じられる一つの答えにチャレンジしていく必要があります。
今回、西野監督はコロンビア戦で結果を出しました。今回のハリル解任をポジティブに見た場合、西野監督が日本人として最高指揮官になり、世界の舞台で経験を積めたことは日本にとって非常によかったと思います。
近年までは、岡田武史さん(FC今治 代表取締役)しか世界の舞台を経験している指揮官はいませんでした。なぜ岡田さん以降、また外国人監督を選んだのか、どうやって日本サッカーを将来強くしようと考えていたのかを日本サッカー協会は考え、話すべきでした。
なぜハリル監督だったのか、なぜワールドカップ直前になって解任したのか、という説明も十分にありません。
日本サッカー協会は、長期的視点に立って、日本サッカー強化の観点から日本人指導者の育成に取り組み、その中の1ステップとして外国人監督の役割を決め、活用すべきでした。
ワールドカップ優勝国すべてが、自国の監督で優勝しています。
監督の選び方に加え、もう一つ重要な点はメンタルコントロールです。強靱なメンタルを持ち、どんな状況でも主張し、耳を傾けられる日本人選手を育成するメソッド開発が重要です。
技術面では世界に十分通用するレベルということは今大会を見てもわかりますし、個人の戦術面でも十分戦えると思います。
しかし、チーム戦術面、メンタル面、もっと言うと指導面に関しては、まだまだ世界と肩を並べられる状況ではないように感じています。
オリンピックでも、金メダル確実と期待された選手がメダルすらとれないシーンをよく目にします。日本人は期待が大きければ大きいほど力を発揮しづらい人種ではないのか、環境が便利すぎるからそうなのか、あるいは歴史的背景に何かあるのか、そういうことをいつも考えます。
日本のスポーツ発展のために、育成年代を対象としたメンタルトレーニングの考案が鍵になりそうです。今回のコロンビア戦には、そのヒントがあると思いました。
決定力とメンタルコントロールの関係性
まず、コロンビア戦でも多くの人が感じたであろう決定力について、少し触れます。
私も日本人の一人であり、欧州と国内でプロサッカー選手でしたが、決定力があったかというと世界レベルではなかったと思います。また、現在、育成年代の指導にもあたっていますが、選手の決定力をどうすれば上げることができるのか、日々悩んでいるのが実情です。
選手の技術力やフィジカルは、決して低くありません。それなのに決定力がないのは、メンタル面の弱さだと思われます。
毎日シュート練習を繰り返しても、試合での決定力のレベルがなぜか上がってこないのです。10年以上前から、日本代表の決定力不足は各メディアで取り上げられ議論されてきました。しかしながら、まだ誰も答えを見つけられずにいます。
私はこの問題を長らく考えてきた結果、決定力を上げるためには、選手一人ひとりがポジティブなイメージを頭の中で創り出すことが必要ではないかという考えにいたりました。
脳の中では、視覚映像と想像で作り出した映像の区別はないそうです。ということは、シュートの際にポジティブなイメージを作り出せたのかどうかが鍵になります。サッカー経験者ならわかると思いますが、シュートが決まるときは打った瞬間にゴールできるかどうかわかりますよね。
フリーキックなら、助走中に何か決まる気、感覚を感じたときに決まっている確率が高いと思いますし、実際、そのような感覚を感じたことが多々ありました。そのときは、ゴールを決めるイメージを最大限作り出せたのだと思います。逆に外すときは、「枠を外しちゃいけない」「ミスをしちゃいけない」といったネガティブなイメージを持った結果、外れる可能性が高いように感じます。
とすると、シュートを打つまでのポジティブイメージが大切ですし、ゴールを決める映像を頭の中に常に描くことが鍵になります。自分の中にポジティブなイメージをプログラムできるようになれば、決定力は大きく上がっていくと思います。
育成年代のスタートには目標設定が大切
メンタルだけではなく、すべてのパフォーマンスを上げるためにも、まずすべきは「目標の設定」です。「目標の設定」に関して重要な点が3つあります。
一つ目には、超えることができる小さな壁(数値化できるものが望ましいです)を設定することと、自分にとってスイッチのはいる、ポジティブな言葉を使うことです。
二つ目には、どんなサッカー選手になりたいのか、なぜそうなのかという問いです。そこには自分なりに人に説明出来る理由とモチベーションがあるとよいと思います。
三つ目には、目標を達成するために自らを夢に捧げる覚悟です。主体は常に自分自身ということを理解する必要があります。
このように目標設定をすることで 、監督が自分を選ぶかどうかといった、自分でコントロールできないことへのこだわりを捨てることができ、意識を自分自身の成長、設定した目標を達成するための行動、積み重ねに向けてフォーカスすることができるようになります。
それが自信となり、環境が変わったとしても自分を冷静に分析し、主張すべきことは主張し、耳を傾けるときは傾けてプレーすることが可能なのではないかと考えています。
スポーツの世界で保守的は無意味、チャレンジあるのみ
日本のサッカー界は時に保守的なところがあります。ルールを変えることや今までに事例がなかったことなどを受け入れたがらない人たちが多いように感じます。これにはあまり意味があるようにも、前進しているようにも思えません。
もちろん今までの歴史を作ってこられた背景やご尽力には敬服し感謝しますが、そこにこだわっていては何も変わらないし、選手たちはいたずらに歳を重ねてしまいます。
これまでのやり方に限界が見えたり、感じたりしたのであれば、勇気をもってチャレンジし、変えていくことで、未来へつながるのではないでしょうか。
今こそそれぞれの団体・クラブが目指すべきサッカー論を持ち、実現するためにベストを尽くす必要があります。そのためには、指導者が大切です。指導者個人が「やりたいからやる」「気が進まないからやらない」ではなく、団体・クラブの目指すべき方向に基づき、指導方針を新たに立案し、実行していく必要があります。
各団体・クラブは、地域性なども踏まえた上で、自分たちのチーム哲学やアイデンティティを言語化していく必要があります。今はあまりに抽象的で、指導者個人に選手の育成を委ねてきてしまった感が強いです。だからこそ各団体・クラブが自チームの目指すべき方向を明確にし、指導方針を見直し、メンタル面を強化し、交流も活発化することで日本全体のレベルアップにつながると思います。
世界では、育成年代の競争がどんどん早くなり、今や16歳でプロ契約をする選手が増え続けています。これ以上遅れることがないよう、日本サッカーに関わる人たちでまずは各団体・クラブの革新のスピードを上げる必要があります。メンタル面に配慮した指導方針、チーム戦術への理解促進に加えて、ゲーム経験をできるかぎり増やすことが大きな変化につながると思います。
我が日本代表も、次のセネガル戦が大会の分岐点になります。日本中が注目と期待をして応援します。未来の日本代表選手たちにはどう映っているでしょうか。残り予選リーグ、決勝トーナメントと様々な角度から観戦しながら未来の育成につなげたいと思います。
頑張れ!ニッポン!!



