勇気と進化

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梅雨が明け、炎天下で高温多湿な気候が続くと、指導者は選手達の熱中症への対策が必要となります。

 

ニュースなどでも耳にすることが多い熱中症ですが、昨年5~9月の期間に熱中症で救急搬送された方は52,984人。その中で7歳~18歳未満は7,685人も救急搬送されています。

 

7~8月にかけてその割合が急増していく傾向にあり、どの試合会場でも、熱さにやられてテントの日陰で休んでいる選手が目立ちます。熱中症に対し、各チーム様々に対策が取られていますが、その巧拙が選手の運動量、そして勝利に大きく影響することは間違いありません。

 

今回は、熱中症に対しての理解、そして対策について考えてみたいと思います。

 

 

そもそも熱中症とはどんな状態か

 

熱中症は、気温の高さなどで、身体の中の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体の調整機能が正常に働かなくなる状況です。

 

人の身体は、常に熱を作り出す一方で、汗をかいたり、皮膚から熱を逃がしたりすることで体温の上昇を抑えています。このような体温の調節機能がうまく働かずに、体内に熱がこもり、体温が異常に上昇すると、熱中症になります。

 

熱中症の重症度について

 

熱中症の症状は、重症度によってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度の3段階に分けられます。指導者が重症度の知識を持っていることで、選手を適切な判断のもとに対応できるようになります。ここでの判断を間違えると命に関わることを指導者は強く認識する必要があります。

 

〔重症度分類Ⅰ度〕(軽症)

【特徴】

めまい、立ちくらみ/筋肉痛、筋肉の硬直、こむら返り/大量に汗が出る など

【対応】

現場での応急処置で対応できる軽度の症状です。しかし、決してそのまま放っておいたり、がまんさせたりせず、涼しい場所へ移動し、安静を保つ、十分な水分補給をするなど、すぐに応急処置をします。その際、必ずだれかがそばに付き添って見守ります。改善しない場合や悪化する場合は医療機関へ搬送も必要となります。

 

〔重症度分類Ⅱ度〕(中等症)

【特徴】

頭痛/吐き気、おう吐/体がぐったりするなどの倦怠感/力が入らないなどの脱力感/集中力や判断力の低下 など

【対応】

速やかに、涼しい場所へ移動し安静を保つ、十分な水分補給をするなどの応急処置をします。その際、必ずだれかがそばに付き添って見守ります。自力で水分・塩分補給ができない場合や、応急処置をしても改善しない場合は、すぐに医療機関へ搬送しましょう。

 

〔重症度分類Ⅲ度〕(重症)

【特徴】

意識がない/けいれんがある/呼びかけへの反応がおかしい/まっすぐ歩けない/体に触ると熱い など

【対応】

入院して集中治療をする必要のある危険な状態です。ためらうことなく、速やかに救急車を要請すると同時に、救急隊が到着するまでの間、その場ですぐに体を冷やす応急処置を開始します。命にかかわる危険性がありますから、絶対に症状を見逃さないようにしましょう。

 

あらかじめの予防が原則。軽症で食い止めよう

 

熱中症は、重症になると、脳にある体温調節中枢が破綻されてしまい、後戻りができません。病院に搬送して治療を施しても、回復が見込めない場合もあるのです。ただ、知っておいていただきたいのは、最初からいきなり重症ではないことです。

 

最初は軽症の症状が見られ、そして徐々に悪化していくので、最初のポイントとして、軽症の時点で見逃さないことが大切です。その時点でしっかり休ませれば重症化することはありません。

 

ところが、これまでにスポーツで起こった死亡事故では、試合で負けたペナルティーとして、選手が疲弊しきっているというのにダッシュを何本もやらせたり、グラウンドを走らせたりしていることが多いのです。選手に決して無理をさせないこと。子供は大人よりも限界点も低いので、特に育成年代の指導者は気をつけるべきです。

 

 

水分は量よりも、こまめに飲むことを重視

 

熱中症対策で最も簡単にできる予防策は、やはり水分補給といえます。塩分(ナトリウム)を含んだスポーツドリンクなどがあればそれにこしたことはありませんが、水を飲むだけでも十分です。

 

運動中に失ってしまった塩分(ナトリウム)は、いろいろな食材の中に含まれているので、普通の食事をしていれば不足することなく補給できます。とはいえ、最近では市民マラソンレベルであっても水だけを多量に飲み、低ナトリウム血症を起こして重篤な状態に陥った例も報告されていますので、水分だけを多量に摂取するのは危険です。スポーツドリンクがない場合には、塩タブレットによる、塩分(ナトリウム)摂取も効果的です。

 

練習開始の約15分前には水を飲み、そして練習中も、回数多くこまめに水分補給を行ないます。一度にたくさん飲みすぎてしまうとパフォーマンスに影響が出てしまいますので、だいたい1回の水分補給で150~200ミリリットルくらい。コップ1杯程度で十分です。育成年代においても、なかなか「水が飲みたいです」と言い出せない選手もいますので、指導者が適切なタイミングでこまめに水分補給をいれることを心がけましょう。

 

 

 

体温調整のポイントは、外からも中からも冷やす事

 

体温調整をするうえで大事なポイントは、汗をかくということです。運動によって体温は上昇しますが、汗をかきそれが蒸発する際の気化熱を利用して体温を下げています。そのため、汗をかくためにも水分補給は非常に大事なポイントとなります。また、この時の飲み物の温度も5度~15度程度に冷やしたものを飲むことで、体内の体温を下げることができます。

 

炎天下、高温多湿などの条件下で運動を長時間行うと、脳に存在する体温調節の働きに異常をきたし、体温調整がうまく働かない状態になります。脳の調整機能を保つには、体全体を流れる血液の温度を下げることが重要となり、主要な太い血管が通る、首の両脇、両脇の下、股関節を冷やします。よく首の後ろを冷やす指導者がいますが、首の両脇のほうが効果的です。

 

発汗だけでは体温調整が追いつかなくなる場合や、思春期前の子供たちには体温調整の機能が完全にできあがっていない場合もあります。その場合には、散水機により選手へ直接噴霧することもお勧めします。直接吹きかけた噴霧は、汗と同様に気化熱により体温を奪ってくれるため、表面の体温調整を行うためには、非常に効果的です。最近では、この散水機を試合会場に持っていくクラブを目にすることが増えてきました。

 

熱中症が疑われるときの応急処置について

 

指導者がどれだけ注意していたとしても、熱中症になってしまう場合がないとはいえません。そんな緊急事態に適切な応急処置ができると、その後の回復は大きく変わってきます。以下の方法をしっかりと頭に入れて、いざという時にあわてないようにしましょう。

 

①    涼しい環境への非難

風通しの良い日陰に避難させましょう。できれば足を高くして、安静に寝かせます。

 

②    脱衣と冷却

衣服をゆるめ、身体からの熱の放散を助けます。シューズやソックスなども脱がして風通しをよくします。露出させた皮膚に噴霧し、うちわなどで扇ぐことにより身体を冷やします。また、首の両脇、両脇の下、股関節の付け根に氷のうを当てて、流れている血液を冷やします。(氷のうが無ければ、自動販売機で買った冷えたペットボトルや缶を当ててもOKです。)体温の冷却は、できるだけ早く行う必要があります。

 

③    水分・塩分の補給

冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらいます。冷たい飲み物は胃の表面から体の熱を奪います。汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液やスポーツドリンクなどが最適です。

 

④    医療機関へ運ぶ

自力で水分の摂取ができない場合や、意識障害、けいれんなどの症状がある場合には、命にかかわる緊急事態です。すぐに医療機関へ向かうか、ためらわず救急車を呼んでください。点滴で補う必要があるので医療機関に搬送することが最優先の対処法です。

 

正しい知識が、正しい判断が選手の命を救う

 

体力に自信のある選手でも、寝不足だったり、疲労が蓄積したりしていると熱中症になりやすくなります。 熱中症にとって、「過剰な自信」「油断」「がまん」「頑張りすぎ」は絶対禁物です。熱中症が「命にかかわる危険な病気」であることを認識し、選手が最悪の事態に陥らぬように、指導者は正しい知識をもとに、正しい判断ができるようになりましょう。