君は映画
監督:上田誠
感想(ちょいネタバレ)
この映画には期待と不安が半々だった。
もちろん、(僕の好きな)ヨーロッパ企画の映画で、今回は第三弾に当たる。
一方、前回まで監督を務めた山口惇太が外れている(予告編だけ担当)。僕は惇太さんを割と評価していて、前作『リバー、流れないでよ』のラスト、神社を駆け上っていくシーンはとても映画的だった。
上田さんは演劇人としては言うまでもない人だし、映画でも脚本とか演出に関しては大丈夫。映像でも短編は撮ったことがある。ただ、撮影に関しては不安がある。
優れた撮影監督でもついていれば良いのだけれど、予告編とかポスターを見てもルックに惹かれるところがない。
冒頭、不安はやや的中する。あまり良い画が撮れていない。説明的な画が多くて(たとえばAがBと喋ってCの話題をすると、カメラもその通りにA→B→Cと映していく)、なんだか低予算の深夜ドラマを見ているような映像。
たとえば同じ劇作家の三谷さんだったら所々に映画へのオマージュを散りばめたり。あるいは、出﨑さんが劇場版『エースをねらえ!』でやったのは、主観的な時間を意識するということだった。たとえばヘリのローターが回っているのがゆっくり見えるとか。これでアニメが映画になった(それこそ、淳太くんの師の本広さんのさらに師の押井さんが気づいたこと)。
まあ、別にそんな難しいことでもないのかも知れない。たとえば、夜の下北沢を歩く主人公たちの横顔を映すカットを入れるだけでも良い。映画としての風情が欲しい。
この映画でも、『リバー』のように主人公たちが階段を駆けて音楽が流れる場面がある。そこだけ見れば割りといいのだけれど、そこでオチがつくわけじゃなくて、そのあともなんかガチャガチャやっているから、映画的な効果は少し薄い。
もうひとつ、これは『ドロステ』の時にも感じたことだけれど、不思議なことが起きた時に、登場人物たちが素直に受け入れすぎてしまうというか。いかにもヨーロッパ企画らしいのだけれど。
演劇だったらまあそれでも良いと思う。演劇は約束事の芸術で、お客さんはそもそも目の前の俳優が付く「ウソ」を受け入れるところからはじまる。「わたしたち映画になってるー!?」で通るだろう。
実写映画の観客はもう少し疑り深い。もちろん、不思議なこと自体は起こってもいい。でも、その不思議なことを(普通の世界の)登場人物に信じさせるには、もう少し手続きが必要なんじゃないかと思う。じゃないとこっち側の観客が自然に受け入れることができない。
たとえば、シャーロックホームズじゃないけれど、「不可能なものを除外すれば、残ったものが――たとえどんなにありそうもないことであっても――真実であるに違いない」みたいな感じ。
この映画では、そうした手続きがなくて、わっと「君は映画」という結論に飛びつくから、それが最後まで結構ノイズに感じた。
途中の転調もいかにも上田さんだけれど、わりとチープに感じてしまった。意図されたチープ性なのは分かる。ただ、二つやっているからなのか、茶番感が強まった。一つ目は良いけれど、二つ目もあるといまいちに感じた。
ラストも少し放っぽり過ぎというか。演劇だったら、舞台からキャストが一気にはけて、静かな時間が流れて、感情のオチがつくのかも知れない。でも、やっぱりこれも映画だからなのか「本当にそれで良いのか?」って疑問が残った。あんまりカタルシスがないような。
まあ…色々言ったけれど。
劇構造自体はしっかりしているから、中盤は割と引き込まれる。途中からは基本的に長回しになるのだけれど、長回しであることの意味も感じた。下北沢トリウッドの建物を活かした構造も上田さんらしい。実際にそこで見たらより引き込まれるのかも知れない。
ヨーロッパ企画らしさはふんだんにある。一方、「君は映画」と言いつつ、いまいち映画らしくない映画。
☆☆☆☆(4.0)
【本予告】映画『君は映画』