リバー、流れないでよ(5.0) | 想像上のLand's berry

想像上のLand's berry

言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

リバー、流れないでよ

監督:山口淳太

感想
 『来てけつかるべき新世界』ではじめて見た理子ちゃん(藤谷理子)、当時まだ大学生だった彼女の演技に「この人、天才だ」と思ったことを覚えている。たった一声発するだけで、そこに世界を作ってしまう。

 この映画の中でも、繰り返される2分の中で、彼女は様々な表情を見せる。舞台ではなかなか目にすることのない瞳の中の表情。時間が戻る瞬間の「カクン」という芝居が妙に味わい深い。

 この映画は彼女のための映画。彼女の実際の実家(貴船ふじや)を舞台に繰り広げられる本作において、常にそこに戻るゼロ地点に設定されている。そこから彼女は水を得た魚のように2分の間に行ける限りの場所へと向かう。

 何度も時が繰り返されるのに、2分の間に生じる様々なルート分岐が、複雑に入り組んだふじやの構造と絡み合って飽きさせない。きっと彼女が幼少の頃から親しんできた場所でもあり、そして脚本の上田さん(上田誠)が好きそうな(執筆意欲が掻き立てられそうな)プチ迷宮的な建物。

 彼女の代表作をこうしてヨーロッパ企画として、ヨーロッパ企画ならではの映画として作ることができたのはとても良かったなと。

 同時に、僕は少しだけ不安になってしまった。友情出演の久保さん(乃木坂46久保史緒里)。周りを見ても、お客さんの層が普段のヨーロッパ企画とはちと違う感じ。おそらく久保さん目当てなのかなあという人も多い。だから、久保さんがしばらく出ていないと「大丈夫かな、不満に思ってないかな」と他人事ながら不安になってしまった。

 トラブル(10年ぶりの大雪)に見舞われて撮影が中断されてしまった本作。挙げ句そのせいで一面の雪景色になってしまって、2分を繰り返しているはずなのに景色の辻褄が合わない。それを脚本でなんとか辻褄を合わせている。その事情を知っているから、なんとなく微笑ましく感じてしまうところもあるんだけれど、実際問題、あまり気にならなかったな。

 なんだろう…不思議なことが起こっているから、これもその一部として消化されるというか。一応、脚本で辻褄を合わせているから引っかかりもないし、むしろ景色にメリハリがつくと言うか、七色の景色と言うかな、味変と言うか、そんな感じでループごとに様々な表情の貴船を楽しめるようになっている。

 少し注文を付けるとすればカメラ。序盤は少し動き過ぎかなあという印象があった。旅館の中を走り回る理子ちゃんを手持ちカメラで追いかけるからどうしても動かざるを得ないのは分かるのだけれど、部屋の中でも動いているから最前列で見ている僕は少し酔うくらいの感じがあった。まあ、それも2分の渦に巻き込まれている内に段々と気にならなくはなる。

 出色は終盤の走るシーン。あれは良いね。さすが本広組だけあって、淳太さん(山口淳太監督)は走るということの効用をよく理解している。あの場面はそれこそ『サマータイムマシン・ブルース』とか『幕が上がる』あるいは同じ本広組の小泉徳宏監督『ちはやふる』にも通じるような青春とかエモさを感じた。あそこでグッと速度が上がることで、こちらの気分も高揚して、最後に「ああ、なんか良い映画を見たなあ」って気分になれる。2分を繰り返すっていうすごく企画性の強い作品だけれど、あそこで「映画」になっているよね。

 藤子・F・不二雄オマージュの「キテレツ大百科」的なガジェットも登場するし、「ヨーロッパ企画の映画」として、もう言う事ないんじゃないかな。

Applause

☆☆☆☆☆(5.0)



映画『リバー、流れないでよ』本予告