ヨーロッパ企画
『来てけつかるべき新世界』(at 下北沢本多劇場)
(ネタバレ注意)
傑作『ビルのゲーツ』で「ゲーム的演劇」の行き着くところまで行ってしまったヨーロッパ企画。昨年の『遊星ブンボーグの接近』では一転して、確たる目標/物語のない芝居。色々と工夫は凝らしてあったけれど、正直、僕はいまいちハマらなかった。さて…今年はどうなるか。
1.
開演前、舞台上には寂れた場末の光景が広がる。写真にでも撮りたいようなセット。奥の書き割りには通天閣。そして、どこからか流れてくる昭和歌謡。段々、この舞台がどういう世界観を持っているのかが分かってくる。と、同時に少し不安にもなる。「すべてそういうノスタルジー要素に回収しちゃって大丈夫なの?」
だけど、すぐに分かる。あ…これは上田さんらしいやと。「タイムマシン」(サマータイムマシン・ブルース)や「星間旅行」(衛星都市へのサウダージ)、「竜退治」(ボス・イン・ザ・スカイ)といったSFファンタジーの非日常的な設定を、日常的コメディにまぶしてしまうところが上田さんの真骨頂だ。
この『来てけつかるべき新世界』、要は『21エモン』なんだよね。昭和的ノスタルジーと近未来的テクノロジーが混ざり合う世界。どちらかがどちらかを否定するのではなく、なんとなく共存しちゃっている。そして、人々はそこで、相も変わらず何となく生きている。大阪の「新世界」という具体性が昭和的ノスタルジーに血肉を加えている。
2.
テクノロジー要素という点では、機械を使った芝居ということも特筆すべきところかも知れない。ラジコン・ロボットは『衛星都市へのサウダージ』でもあったし、モニターを使った芝居は、前作『遊星ブンボーグ』でもあった。今作はそういうものがごそっと入ってる。ユースケとヨーロッパ企画がやった深夜番組『一旦、カメラ止めようか?』に登場した電光掲示板会話もあるしね。
面白いと思うのは、見ている方からすると、機械の芝居って人間の芝居よりもよほどハラハラするってこと。必ずしもスムーズに動くわけじゃないから、「ちゃんと動く? 大丈夫? トラブらない?」みたいにハラハラするんだ。それによって、機械に対して「がんばれ…」みたいな感情移入が生まれる。機械に対するこういう手付きもヨーロッパ企画らしい。
ドローンはさすがに本物ではない(ワイヤーで吊るしている)けれど、ドローンを弄り倒す小ネタもなかなか楽しい。ヨーロッパ企画においてテクノロジー要素を体現する酒井くんの役回りも、いつも通りのあの感じだ。
3.
物語という点では、明確な筋を持っているわけじゃないから、ちょっとごった煮感はある。ただ、5話に区切っていることであまり気にならない。映画というよりはTVシリーズみたいで、その辺も『21エモン』っぽい(あるいは新喜劇っぽいのかな…その辺、僕はよく分かっとらん)
それに何より、串カツ屋の看板娘を演じている藤谷理子さん(客演)が素晴らしい。幕間に彼女がナレーションを読み上げ「第2話〇〇」と言うだけで、そこにパッと新たな世界が拓ける感じがする。(実際には幕はずっと上がっているのに)まるで新たに幕が上がったように思えるんだ。
わかりやすい傑作というわけではないかも知れないけれど、にぶく光る佳作、という感じかな。