48界隈でとある紀要論文が話題になっています。後述するように、僕はこれ、かなり胡散臭い代物だと思っています。あらかじめ断っておくと、僕は(これまで何度も書いてきたように)まほほん支持の立場です。でも、この論文は信用できません。
これがどれだけ信用できないか、ひとつだけ例を挙げます。
2-1では「2017 年リクアワの NGT 不正投票システム」と題して、2017年リクアワでの「不正疑惑」が取り上げられています。この年のリクアワではベストテンにNGT曲が3曲も入ったことが話題になりました。
10 位 アイスのくちづけ(AKB シングル c/w)
9 位 今ならば(NMB シングル c/w 渡辺美優紀卒業曲,山本彩作曲ソロ)
8 位 心のプラカード(AKB シングル)
7 位 君はどこにいる?(AKB シングル c/w NGT 曲)
6 位 Make noise(AKB シングル c/w HKT 曲)
5 位 NGT48(NGT 公演曲)
4 位 月と水鏡(AKB 公演曲 横山由依ソロ)
3 位 赤いピンヒールとプロフェッサー(AKB アルバム曲 松井珠理奈ソロ)
2 位 47 の素敵な街へ(AKB シングル c/w AKB チーム 8 曲)
1 位 Max とき 315 号(AKB シングル c/w NGT 曲)
この論の著者はこのことを取り上げて以下のように論じます。引用します。
NGT の「Max とき 315 号」とチーム 8 の「47 の素敵な街へ」の 1 位争いというのが大方の予想であったので,それぞれのファンは自分の推しメンが所属するグループ・チームの 1 位候補曲に票を集中させようとするだろうから,各グループ・チームで 1 位の曲と 2 位以下の曲との間には大きな差がつくはずであるにもかかわらず,NGT の曲がベストテンのなかに 3 曲も入っているのは極めて不自然であり,NGT のファンは 1 位を確保するのに必要な票がどれくらいかを予測し,それを投じた上で余分な票を他の 2 曲に回していることになり,NGT ファンの票の多くはごく少数の者がどの曲に投じるかを決定したものとしか考えられない。上位 200 曲をみると NGT の楽曲は 3 曲だけであり,その順位が 1 位,5 位,7 位となっているので,「Max とき 315 号」を 1 位にし,他の 2 曲も大きな差をつけずに上位に入れるという意図のもとで,ごく少数の者が NGT 楽曲に投じられた票のかなりを一括操作していたことになるだろう。
しかも,リクアワについては各楽曲の投票数は公表されていないので,得票数などに関する過去の非公開の情報を得た上で 1 位獲得に必要な票数を割り出し,それを差し引いて他の 2 曲の票数を決めていると推測できるので,非公開情報にアクセスできる立場の少数の者が投票を行っていたことになる。それは,AKS 内の NGT 運営かその委託を受けた者ということになるだろう。さらに言えば,投票締め切りが12月14日午後3時で結果発表まで1ヶ月以上もあるので,投票集計後に NGT 票を加算することもできたはずだ。(中略)
有料サービス会員のひとつが AKB48 公式ファンクラブ「二本柱の会」会員であることから,のちになると NGT の楽曲やメンバーにリクアワや総選挙で大量票を投じていると思われる存在は柱王と呼ばれることになるが,以上の考察から,柱王は 2017 年 1 月のリクアワにおいてすでに存在し,過去の非公開情報または当年の集計結果に基づいて大量票を投じていたことは確実であろう。NGT の楽曲やメンバーだけが有利になるよう,公表されている投票規則に反して意図的に投票結果が歪められていたのだから,偽計業務妨害や詐欺に該当する違法な不正投票であることは間違いないと思われる。
(平山朝治「NGT48 問題・第四者による検討結果報告」pp.90-92)
ここで著者は「偽計業務妨害や詐欺に該当する違法な不正投票であることは間違いない」とかなり強い主張を行っています。しかし、その論拠はいったいどうでしょうか。
順に追っていきます。まず著者は、ベストテンにNGT3曲が入るという結果は不自然なので、「NGT のファンは1位を確保するのに必要な票がどれくらいかを予測し,それを投じた上で余分な票を他の 2 曲に回していることになり、ごく少数の者がどの曲に投じるかを決定したものとしか考えられない」と言います。
不自然だとする根拠はこう提示されています。「NGT (中略)とチーム 8(中略) の1位争いというのが大方の予想であったので,それぞれのファンは自分の推しメンが所属するグループ・チームの 1 位候補曲に票を集中させようとするだろうから各グループ・チームで1位の曲と2位以下の曲との間には大きな差がつくはずであるにもかかわらず,NGTの曲がベストテンのなかに3曲も入っているのは極めて不自然」だと。
本当ですか?
ファンは必ずしも理に適った投票を行うわけではありません。まず、①ファンは事前の予想を知らないで、あるいは知っていてもそれとは無関係に投票することがありえます。②ファンは推しメンとは無関係に投票することがありえます。今年のリクアワでも誰推しが入れたかよく分からん曲が結構はいっていましたし、かつて僕自身、「推し」のみぃちゃんとは無関係に毎回『ずっとずっと』に入れていました。③それとは逆にファンはグループより「推し」を優先することがありえます。たとえば『君はどこにいる?』はかとみなのセンター曲なのでかとみな推しはこの曲に入れた可能性があります。したがって、「ファンは自分の推しメンが所属するグループ・チームの1位候補曲に票を集中させようとする」とは必ずしも言えないことになります。
追記:実際、当時配布されていたこういうチラシを見つけました(50以上RTされています)。
https://twitter.com/MASATOAKB48G1/status/801751660603129856/
また、リクアワはグループごとに平均的に入るものでもありません。①箱推しの数。AKBはファンの絶対数こそ多いでしょうが、箱推しが壊滅しているとも言われます。そのため票が分散する傾向があります。チーム8は例外的に箱推しの多いチームです。②モチベーション。SKEやNMBは自前のリクアワを持っている、ないし持っていたこともあり、AKBリクアワでのモチベーション自体さほど高くなかった可能性があります。根拠は2018年までSKEヲタだった僕自身です。③楽曲の数。これが決定的なのですが、他のグループとNGTでは楽曲の数が違います。この時期、NGTはまだデビューしておらず、楽曲数が圧倒的に少なかったのです。人気投票を行った場合、楽曲数の多い他グループの方が票が分散するのは当然です。
追記:以上のことから、NGT以外のグループでは票が分散しており、また全体の票数自体も多くはなく、したがって楽曲ひとつ辺りの票数が少なかった可能性があります。ベストテンにソロ曲が多いこともそのことを証明しています(ゆかるんの『アイスのくちづけ』もソロ曲みたいなもんですし)。つまり、有力メンバーのヲタが頑張れば、ベストテンに送り込めるくらいの票数だったわけです。一方、新グループのNGTは投票イベント自体もあまり経験していなかったことからファン全体のモチベーションが高く、また楽曲数が少ないため資源を集中できたと考えられます。
追記2:当時の論評でも「上位に楽曲を連ねたチーム8とNGT48には1つの共通点がある。それは活動歴がともに浅いということだ。チーム8は2014年結成、NGT48に至っては2015年に結成されたグループだ。歴史が短い分、当然、楽曲数も少ない。ここがこの順位のポイントで、チーム8とNGT48各ファンの投票は分散することなく、効率的に特定の楽曲に集中。結果、このようなランキングにつながるのだ」という指摘があります。
https://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20170124/enn1701241322020-n2.htm
これらを踏まえて考えると、果たして2017年のNGT3曲ベストテン入りはそれほど不自然なことだったでしょうか? ここで僕は、「絶対に不正はなかった」と主張しているわけではありません。僕の推論が100%正しいと言いたい訳ではないのです。そうではなく、いくらでも他に説明のしようがあるにも関わらず、そうした他の可能性には目を向けず「~としか考えられない」「確実であろう」「間違いない」と言いきってしまう著者の姿勢に疑問を呈しているのです。
著者は、この薄弱な根拠に基づいて、「過去の非公開情報または当年の集計結果に基づいて大量票を投じていたことは確実であろう」「偽計業務妨害や詐欺に該当する違法な不正投票であることは間違いない」と議論を進めていきます。しかしながら、こうして見ていくと、「間違いない」という強い断定の大元になっているのは、「ファンは推しメンが所属するグループ・チームの1位候補曲に票を集中させようとするだろうから(中略)NGTの曲がベストテンのなかに3曲も入っているのは極めて不自然」というはなはだ心もとない根拠なわけです。
追記3:そもそも不自然だからといって、それが即不正の証拠にはならないわけです。のちに著者は『PRODUCE48』の不正疑惑を取り上げ、「確率的にまずありえない結果は(中略)不正票による捏造の証拠になる」として、「リクアワ2017上位200曲に入った全てのNGTの曲が1,5,7位になることはそう」だとしています。たしかに『PRODUCE48』の場合は最終審査の票数がすべて「445.2178」の倍数であり、これは「確率的にありえない」わけで明らかに人為的に操作されていると分かります。でも、その「不自然さ」と、NGT3曲がリクアワですべてベストテンに入ったという「不自然さ」とでは、不自然さの次元が違います。後者は上述したように、そもそも曲数が少ないのでファンの投票が集中しただけとも考えられるわけですよ。「確率的に」ありえなくはないわけです。実際、直近でも似た事象がありました。候補者を絞ったNMBが上位を独占したSRのTGCイベントがそれです。こんなの、みくりんでも理解できる話ですよ←
こんな脆弱な根拠のもとに、これほど強い断定を、しかも違法行為を断定してしまう研究者を、僕は一研究者として信用できません。
論文は「大学教授」という肩書ではなく、その内容によって評価されるべきです。僕が恐れるのは、このような不誠実な論考が大学紀要に掲載されることで、一種の権威を帯びてしまうことです。これ以降、「2017のリクアワでは不正投票が行われた」と書こうとするとき、この論文を引用できてしまうわけです。そして、その中身は精査されずに、それが事実のようにまかり通ってしまうのです。
もう一度、言います。一研究者として、僕はこの論文は信用できません。
