前田建設ファンタジー営業部
監督:英勉
概要
前田建設工業が連載している、架空の世界の建造物を実際に作ったらどうなるかを工期、工費を含めて検証するウェブコンテンツを映画化。検証第1弾「マジンガーZ」地下格納庫編を基に、上司が発案した突飛な企画を実現しようと奮闘するサラリーマンたちを描く。主演の高杉真宙、お笑いコンビ「おぎやはぎ」の小木博明のほか、上地雄輔、本多力、岸井ゆきのらが共演。脚本をヨーロッパ企画の上田誠、監督を『賭ケグルイ』シリーズなどの英勉が務めた。(シネマトゥデイより)
感想
脚本の上田誠さんが出来上がりを見て、数ある自身の脚本の映像化のなかでも珍しく納得がいったというこの作品。『サマー・タイムマシン・ブルース』『曲がれ!スプーン』『四畳半神話大系』『夜は短かし歩けよ乙女』『ペンギンハイウェイ』など、数々の名作がある上田さんがだ。
自然、期待は高まる。
冒頭、小木さんの役者としての力不足を感じる。森繁久彌、伴淳三郎、三木のり平、フランキー堺、渥美清…かつての本当に「芸達者」だった芸人たちに思いを馳せる。キャストでは、また別の点も気になった。たとえば、今回ほんちゃん(本多力)が演じていたのは、舞台版では酒井さんの役。「うわ…酒井さんっぽいわ~」とか。別の役でも「このキャラ、諏訪さんっぽい!」みたいな場面が結構ある。
ヨーロッパ企画はエチュードしながら役者自身が役を作っていく(それが脚本にも反映される)から、彼らが舞台化した時の名残りがちょっと残っているんだよね。当然、映画化に当たってリライトしているのだろうけれど、「この役◯◯さんっぽい…」というのがちょっと残っているんだ。ヨーロッパ企画ヲタの僕にはそれが頭に浮かんでしまう。
序盤はそんな感じでなかなか物語に集中できない。
ただ、リズムがいいから徐々に引き込まれていく。上田さんは作劇上の「コンフリクト=葛藤」としての役をあまり作らない。たとえばイヤな上司とか理解しない親が出てきて、そいつが物語上越えるべきハードルになる…みたいな作劇はしない。むしろ、一見ハードルとして出てきたヤツがいつのまにか味方になっていて、それが笑いに繋がる…みたいなのが上田脚本の真骨頂だ。
そうした作劇がリズムの良さにつながる。この映画もそう。それにこれは、演出のリズムもいい。映画らしく、やや感動よりには作られているけれどね。(『トリガール!』では酷評した英監督だけれど、『ヒロイン失格!』なんかは割りと良かったし、もともと能力はある監督さんだと思う)
この映画で物語上のハードルになっているのは、昔のアニメ特有の突拍子もない設定だったり、各話ごとに描かれ方の違う基地の描写。そうしたものに主人公たちは振り回される。でも、「アニメ作った人たちも面白いと思って描いたんだよ~!」って感じで、全然イヤな気分にならない。この映画は人をイヤな気分にさせない。
そうして映画の中に引き込まれるに連れて、キャスティングに対する僕の違和感も解消されていった。
熱量。『フォード対フェラーリ』を見た時に感じたのは、「この人たちは小さい頃からの夢をずっとずっと追い続けてきた人たちなんだろうな…」ということ。彼らは選ばれた一部の人間=ヒーローであり、僕(ら)とは違う。
この映画の目線はもう少し僕らに近い。普通に大学を出て、普通に就職して、いつのまにか社会人として日々の生活に追われている主人公たち。だけど、そんな中でもファンタジックなものを夢想することができる、小さい頃の夢を追いかけることができる。そして何より、今まで社会人として培ってきた技術やノウハウを、そこに活かすことが出来る。そこがアツい。実は2つの道はつながっているんだ。
終盤、ゲスト陣が目を輝かせながら夢を語るシーンはシンプルだけれど力強い。この映画では、誰もがみな小さな子どもを胸の内に抱えている。僕らと同じように。
☆☆☆☆★(4.5)
映画『前田建設ファンタジー営業部』 予告