アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
I, Tonya
監督:クレイグ・ガレスピー
概要
第75回ゴールデン・グローブ賞作品賞(コメディー/ミュージカル)にノミネートされたほか、さまざまな映画賞で評価された伝記ドラマ。五輪代表に選ばれながら、ライバル選手への襲撃事件などのスキャンダルを起こしたフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの軌跡を映す。監督は『ラースと、その彼女』などのクレイグ・ギレスピー。『スーサイド・スクワッド』などのマーゴット・ロビー、『キャプテン・アメリカ』シリーズのセバスチャン・スタンらが出演。(シネマトゥデイより)
感想
これは、「アメリカ」という小さな村社会の話だ。たかだか国内リーグの優勝決定戦を「ワールドシリーズ」と呼び、たかだか全米選手権の勝利をもって「あの時、私は世界一だった」と宣う、そういう狭い世界の話だ。
リレハンメル。僕がもっとも愛したオリンピック。「襲撃事件」のことは知っていたけれど、大して興味はなかった。オリンピック当日も、靴ひもが切れたとかで泣きながらやり直しを訴えた彼女を見て、「泣けば済むのかよ…」と思ったくらい。僕には、ナンシー・ケリガンもトーニャ・ハーディングもどうでもよかった。
僕は、戦火に見舞われるサラエボのために踊ったカタリナ・ビットに夢中だった。あの日の氷上で、ただ一人カタリナ・ビットだけが美しかった。他のすべては、それを引き立たせるための前座にすぎなかった。この映画を見ながら、「これ僕にはどうでもいい話だな…」という思いをずっと拭い去れなかった。
映画の最後に、こんなセリフがある。「当時、私はビル・クリントンに次いで世界で2番めに有名だった」
どこの世界の話だ…?
1994年、アメリカではサッカーW杯が開かれた。ロマーリオが世界一になり、またロベルト・バッジョが世界でいちばん美しいPK失敗を見せたのがこのW杯だ。1994年がどういう年だったか。ニルヴァーナのカート・コバーンが死去し、南アフリカではかのネルソン・マンデラが大統領になった年だ。
試しにググって見れば良い。映画公開後でも、Tonya Hardingは589万、それに対してRoberto Baggioは670万、Romarioは1570万、Kurt Cobainは3480万、そしてNelson Mandelaは7700万件のヒットがある。
「事件」は、フィギュアスケートしか知らない彼女と、それを取り巻く近視眼的な人間たちによって起こされた。でも、この映画はそこを相対化しない。アメリカ=世界にそのまま置き換えられている。彼女たちの近視眼的な姿をあぶり出すこの映画自体が近視眼的になっている。
この映画とこの女性とアメリカはそっくりだ。どこまでも夜郎自大なところが。邦題がまたそれに輪をかけている。
☆☆☆★(3.5)
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』予告編
[HD] Katarina Witt - 1994 Lillehammer Olympic - Free Skating